本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

画像生成AIと写真の未来について

はじめに

近年、Midjourney等の画像生成AIの性能がどんどん上がっており、写真と間違えるようなクオリティの画像も生成できるようになりました。例えば、冒頭の画像は、私がStable Diffusionを使って出力した画像です。

また、上手な人になると、以下のような画像も生成できるようになるようです。

光のあたりからやボケ感など、とてもリアルですね。ここまでくると、もはや実際に撮影した写真なのか、それとも画像生成AIにより作成されたものなのかわからなくなってきてしまっているように思います。

今後のAI技術の進展を考えれば、画像生成AIは、写真により似た画像を生成することができ、写真と生成された画像の区別があいまいになってくるのではないかと思います。もはや、写真を撮らずとも、画像生成AIによって生成された「写真」でも事足りるようになる世界が、近づいているのではないかとも思います。例えば、雑誌の写真等、商用写真の一部が、AI生成画像により代用される未来が来るかもしれません(もしかすると、すでに代用されているかもしれません。)。

しかしながら、私は、「写真を撮る」という行為については、依然としてしぶとく残り続けるのではないかと考えています。その理由は、①写真は記録としての要素を持っていること、②(少なくとも現時点では)実在の人物や物、風景を正確に出力しづらいこと、③写真は自己表現の手段としての側面を有すること、④過去の写真と類似の写真ができてしまう可能性が拭えないこと、⑤写真を撮るという行為がすでに十分に簡単であることにあります。

理由

理由①:写真は記録としての要素を持っていること

写真は、その性質の1つとして、今という一瞬を切り取るという力を有しています。しかしながら、画像生成AIは、その「記録」という重要な要素を欠いています。例えば、ある年のあるお祭りの写真のような画像を生成できたとしても、そのお祭りの記録足りえません。また、友達と行った旅行のフェイク画像を生成しようとする人はいないでしょう。架空の画像を生成したところで意味はありませんし、今時スマートフォンで簡単に写真を撮ることができるのですから。

理由②:(少なくとも現時点では)実在の人物や物、風景を正確に出力しづらいこと

画像生成AIで、現実に生きる特定の人物や物、風景を完全に正確に表現した画像を安定して生成するのは、少なくとも現時点では難しいのではないかと考えています。そうすると、(理由①と若干かぶるものの)本当に「リアル」な画像を得るためには、写真を撮ったほうが早いということになるように思います。

また、人間は、人間そのものに興味を有するという性質があるように思います。いくら、とても美しい人の画像を生成できても、そんな架空の人物の写真は、人間として魅力的な推しのアイドルの写真に比べたら全然価値はないと考える人もいそうですね。

理由③:写真は自己表現の手段としての側面を有すること

写真の撮り方には、撮影者の個性が表れます。自分らしい写真を撮ることに、日々努力されている方も多いでしょう。画像生成AIは、AIによる介在を含むことから撮影者の個性を出しにくく、「写真家」としての個性は出しにくいのではないかと思います。そのため、少なくとも、私としては、例えばいくら簡単に綺麗な風景「写真」を画像生成AIで出力できたとしても、それを活用しようとは思いません。そこに、「私」としての個性はない以上、価値を感じないからです。そんな画像を見るくらいなら、インターネットでいくらでもアップされている写真家の写真を見るわ、という思いでいます。

ただし、写真とは全く別ジャンルとして、画像生成AIの使い方に個性が生じることはありそうですね。

理由④:過去の写真と類似の写真ができてしまう可能性が拭えないこと

画像生成AIは、他の画像を学習した結果できたモデルから画像を出力することから、原理上、過去の写真と類似の写真ができてしまう可能性はぬぐえません。それが著作権侵害となるかという議論は別途あるものの、著作権侵害とならなくとも炎上するリスクは出てくるのではないかと思います。

⑤写真を撮るという行為がすでに十分に簡単であること

あなたがスマホを起動して写真を撮るまで、5秒もかからないでしょう。これに対し、画像生成AIを利用したり、画像生成までには一定の時間がかかります。また、写真であれば近くにあるものを簡単に撮影できますが、画像生成AIであれば細部まで思いどおりの画像を生成するには時間がかかります。いちいち入力する単語等を調整しなければならないわけですし。

まとめ

以上から、写真を撮る行為自体は、残り続けるのではないかと考えています。ただし、写真っぽい画像がどんどんと出力され、閲覧者の誰にも気づかれず、使用される未来は近づいているようにも思います。

また、上記は、AIが一から生成した画像についての話ですが、写真を撮ったうえで、その場でAIにより画像をエンハンスする(例えば、邪魔なものを消してよりきれいな構図としたり、顔の形等をより「美しく」したり)ということは、現状のインスタ等のフィルターやSnowのようなアプリの延長線上で、気軽に使われていくのではないかと思います。今でさえ、目を大きくしたり、肌を滑らかにしたりは普通に行われている訳ですし。

そうすると、今後、「リアル」と「非リアル」の境界が、どんどんと侵食されていくことは、間違いなさそうですね。

関連記事>>>機械による自動撮影と写真の未来─Google ClipsとParty-Shotに思うこと - 本やらなんやらの感想置き場

【初心者向け】カメラの勉強法

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  • はじめに
  • ①写真を撮る機会を増やす
    • 一緒に写真を撮る友達を作る
    • カメラを持っていく機会を増やす
    • SNSに投稿する
  • ②撮った写真を見返す
  • ③カメラの撮影方法について学ぶ
  • 単焦点レンズを買う
  • まとめ

はじめに

 本稿では、まったくカメラについて勉強したことのない方に向けて、自分の経験を元にどのように写真を勉強したら良いか書いていきます。

 何よりも大事なのが、以下の①〜④のうち、①の写真を撮る機会を増やすことです。

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親指AFのメリット・デメリット・感想

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はじめに

 親指オートフォーカス(親指AF)って本当に必要なの?写真を初めてしばらく経った人が、一度は抱く疑問であるかと思います。別にシャッターボタン半押しでピントを合わせるだけでも良いじゃないかと思う方も多いでしょう。

 そこで今回は、親指AFのメリット・デメリットについてまとめてみます。ついでに親指AFを使ってみた感想を書きます。

メリット

いつでもマニュアルが使える

 親指AFは、フォーカスのボタンとシャッターボタンが別です。言い換えれば、マニュアルで調節したピントが、シャッターボタンでずれてしまうことがありません。

 マニュアルで撮るのは難しいし、マニュアルで撮る必要がないと考えているあなた。実際に親指AFで自由にマニュアルが使えるようになってみると、意外とマニュアルで撮るのが便利なことに気づくかもしれません。

 例えば、暗いところでは自動ではピントが合わせづらいですが、そこをマニュアルでピントを調節することで、暗闇でもうまくピントを合わせやすくなります。また、通常ピントを合わせないようなところにピントを素早く合わせるにも、マニュアルは非常に便利です。

 また、瞳AFがないカメラで目にきちんとピントを合わせるためには、マニュアルで操作する必要があります。

ピントを合わせるためにボタンを半押しし続ける必要がなくなる

 通常のシャッターボタン半押しAFでは、一度シャッターボタンを離してしまうと、再度シャッターボタンを押すタイミングでまたピントが自動で調節されてしまいます。それを避けるためには、シャッターチャンスまでひたすらシャッターボタンを押し続けなければならず、少々大変です。

 親指AFでは、シャッターボタンをいくら押してもピントは変わりませんから、一度ピントを合わせた後にシャッターボタンを押しっぱなしにする必要がなく、楽です。

S-AFとC-AFの設定を切り替える必要がなくなる

 通常の半押しAFでは、一度だけピントを合わせるモード(いわゆる「S-AF」など。メーカーによって名前は違います。)と、半押しにしている間ピントを自動で合わせ続けるモード(いわゆる「C-AF」など。メーカーによって名前は違います。)を切り替えなければ、不都合なタイミングでピントが合う/合わないことがあります。

 これに対し、親指AFにして、親指を押し続ける間ピントを合わせ続けるように設定すれば、親指を押しているタイミングにのみ常にピントを合わせ続けられることになるので、不都合なタイミングでピントが合う/合わないことが無くなります。

デメリット

他人にカメラを貸す時に説明が少し大変

 通常のカメラでは、シャッター半押しをすると自動でピントが合います。そのため、貸すときにピントボタンの使い方を教えないと、カメラを貸した友達がうまく写真を撮れないといったことになります。

 私個人の経験として、ピントボタンを押した後にシャッターボタンを押すように教えても、そのように操作してもらえないことがままあります。

親指AFに慣れるのが多少面倒

 親指AFに切り替えた当初は、使い方を覚えるのに少し時間がかかります。まあ、100枚も撮れば慣れますけど。

感想

 当初、僕は親指AFは必要ないと考えていました。しかしながら、一度親指AFにしてみると、ピントを自分で自由に操れることの便利さ、面白さに気づくことになりました。特に、暗いところでマニュアルでピントを合わせられるようになって撮影できるシチュエーションが広がったり、あえてピントを外して表現の幅を広げたりすることができたりするのは、面白いです。

 友達に自分のカメラを渡す時に説明の手間が少し増えたり、親指AFを練習するのに多少時間がかかるといったデメリットはありますが、それらのデメリットはそれほど大きくありません。

 親指AFを使ってみて、合わなければすぐ設定を戻せば良いだけですから、この記事を読んでまだ親指AFを使うか迷っている方は、とりあえず設定を親指AFに変えてみることをおすすめします。

Nikon ミラーレスカメラ 一眼 Z7 ボディ

Nikon ミラーレスカメラ 一眼 Z7 ボディ

  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: Camera

フルサイズ一眼レフのメリット・デメリット・注意点・感想

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はじめに

 本稿では、フルサイズ一眼レフを買ってみようか悩んでいると言う方に向けて、フルサイズ一眼レフのメリット・デメリット・注意点について書いていきます。あとフルサイズ一眼レフを使ってみた感想も書きます。

 フルサイズ一眼レフは、APS-Cの一眼レフの上位互換ではなく、得意不得意があります。それを踏まえた上で記事をご覧いただけると幸いです。

メリット

ダイナミックレンジが広く画像編集がしやすい

 フルサイズ一眼は、センサーサイズが大きく、「デジタルカメラがとらえることができる、明るい部分から暗い部分への再現可能な幅」すなわちダイナミックレンジが広いです*1。カメラが幅広い明るさを捉えられるため、階調再現が優れた画質の良い写真になると同時に、RAW画像を画像編集した場合に暗い部分を明るくしたり、明るい部分を暗くしやすいです。

ノイズ耐性が高い

 フルサイズはセンサーサイズが大きいため、撮像素子が受け取る光の量が大きくなりやすいです。そのため、ISO値を上げて高感度で撮影しても、ノイズが発生しにくいです。結果、暗い場所でも写真を撮りやすくなります。また、ISO値を上げることでシャッタースピードを上げられるので、速いスピードで動く物体も捉えやすくなります。

 ノイズの量の差については、以下の記事が参考になります。

ASCII.jp:フルサイズ一眼「EOS 6D MarkII」とAPS-C一眼「EOS 80D」、高感度と階調はどれだけ違う!? (1/3)

ボケやすい

 フルサイズ一眼は、センサーサイズが大きいので、他のカメラと比べてボケやすいです。逆に言えば、はっきりと写る範囲がAPS-Cよりも狭いということでもあり、撮影者によってはデメリットにもなり得ます。

 ボケやすさについては、以下の記事が参考になります。

【キヤノン公式】一眼レフカメラ・ミラーレスカメラの「フルサイズセンサー」ってなに?カメラのセンサーサイズによる違いを解説|カメラ初心者教室

より広角に写る

 APS-Cのカメラは、フルサイズのカメラとセンサーサイズが違うため、同じレンズを使っていても焦点距離ニコンなら1.5倍、キャノンなら1.6倍になります。そのため、フルサイズカメラの方がより広い範囲を写すことができます(APS-Cのカメラは狭い範囲しか写せない代わりに、遠くの物体をより大きく撮影することができます。)。

 ただ、APS-Cのカメラでも焦点距離の短いレンズを使えば、かなり広角に撮ることができます。例えば、ニコン焦点距離が10-20mmのAPS-C用のレンズを販売しており、このレンズの焦点距離はフルサイズ換算しても15-30mmと十分に広角です。

 撮影できる範囲については、以下の記事が参考になります。

【キヤノン公式】一眼レフカメラ・ミラーレスカメラの「フルサイズセンサー」ってなに?カメラのセンサーサイズによる違いを解説|カメラ初心者教室

カメラ自体が重いため重いレンズとバランスが取りやすい

 フルサイズ一眼は大きくて重いため、重いレンズを装着した場合にはバランスを取りやすいです。

所有欲が満たされる

 フルサイズ一眼は、APS-Cよりも大きくて存在感があり、かつ価格も高いため、所有欲が満たされることがあります。

デメリット

価格が高い

 基本的に、フルサイズのカメラは高いです。また、レンズ自体もAPS-C専用のものと比べて高くなる傾向にあります。

大きく重い

 基本的に、フルサイズの一眼レフやレンズは大きくて重くなります。例えば、ニコンAPS-Cの一眼レフであるD5600は465gであるのに対し、ニコンのフルサイズ一眼レフであるD750は840gであり、かつD5600よりも大きいです。

遠くのものを撮りづらい

 APS-Cのカメラは狭い範囲しか写せない代わりに、遠くの物体をより大きく撮影することができます。そのため、APS-Cのカメラと比較すると、フルサイズのカメラは遠くの物体は撮りづらいです。

注意点

先に撮影法・画像編集について学ぶ

 写真は、カメラだけでなく、レンズ・撮影法・画像編集によっても変わります。撮影法を学ぶこと、画像編集の方法を学び画像編集ソフトを利用することで、お金をそれほどかけずに、写真を劇的に変えることができます。正直なところ、この2つに投資したことがなく、フルサイズカメラを買うお金があるのであれば、これら2つにお金を投資すべきです。その方が、よっぽど良い写真が撮れるようになります。

 写真の撮影法については、全く勉強したことがない方については、とりあえず以下の二冊を読むと良いでしょう。

写真構図のルールブック

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写真の露出・光・色のルールブック

写真の露出・光・色のルールブック

  • 作者:近藤 伍壱
  • 発売日: 2013/07/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 また、画像編集については、カメラメーカーが提供している無料のものを使うのも良いですが、多くのカメラマンが使っているLightroomPhotoshopを使ってみることをお勧めします。画像編集の速さ、使いやすさ、表現の幅が無料のものと比べて段違いなので。

フルサイズのカメラを買う決断は早めにする

 レンズの中には、APS-Cのカメラのみに対応しているレンズがあります。そのため、レンズを沢山持っていても、フルサイズのカメラに使えず、レンズが無駄になる場合があります。また、APS-Cのカメラのアクセサリー(予備バッテリーなど)をフルサイズカメラに使えず、無駄になる場合もあります。

 そのため、いずれフルサイズ一眼レフを買うつもりがあるのであれば、レンズやアクセサリーをたくさん揃える前にフルサイズ一眼レフを買ってしまった方が、結果的に安く済みます。僕は、予備バッテリーとAPS-C専用のレンズを2つ購入してからフルサイズ一眼を買ったので、早めにフルサイズ一眼を買えばよかったと少し後悔しました。ただ、フルサイズ用のレンズを買う分には特に問題が生じないので、迷っている方はフルサイズ対応のレンズを買うようにした方が良いかと思います。

ミラーレスカメラも検討する

 フルサイズ一眼レフは、大きくて重いというデメリットがあります。このデメリットは、フルサイズのセンサーを搭載したミラーレスカメラであれば(少なくとも一定程度)解消されるものです。そのため、フルサイズ一眼レフを買おうとしている方でも、一度フルサイズミラーレスカメラも検討してみると良いでしょう。

 ミラーレスに移行しようとする場合には、性能に優れたソニーのαシリーズが最有力となるでしょう。

 今までソニー以外のカメラを使っていて、新たにαシリーズを買う場合、レンズやアクセサリーを全て買い換えることになりかねません。ミラーレス一眼レフを買おうと考えている方は、尚更早めに決断した方が、結果的に安くつく可能性があります。

感想

 僕は、様々なメリットデメリットを比較してフルサイズ一眼レフを買うか否かかなり迷いました。僕がフルサイズ一眼レフを買う決め手となったのは、僕は写真を趣味としているわけだし、買う資金もあるのだから、一度フルサイズ一眼レフを試すのも悪くないと思ったことです。

 実際にAPS-Cのカメラからフルサイズ一眼レフに変えてみると、ISO値を上げやすいため、暗所・建物内などより多くのシチュエーションで撮影が可能になり、非常に良かったです。また、ダイナミックレンジが広いため、画像編集の幅も広がったように思います。その一方で、ボケ具合や撮影範囲の広さについては、レンズによるところも大きいので、様々なレンズを揃える必要があると感じました。

 デメリットについて言えば、危惧していた重さ・大きさについても次第に慣れてきて、むしろAPS-Cのカメラが小さく軽すぎるような印象すら抱くようになりました。まあ、疲れてきたときにはずっしりと重いと感じることはあるのですが。また、遠くのものが撮りづらいことについても、基本的に僕は望遠よりも広角レンズが好きなこともあって、それほど気になってはいません。

 結局のところ、フルサイズ一眼レフは撮影できるシチュエーションが大幅に増えると同時に、画質も向上するので、フルサイズを持ち歩く体力があり十分な予算があるなら買わない手はないかと思います。自分も、フルサイズを買うまでは悩みましたが、実際に買って使用してみると、非常に便利で本当に買って良かったと思いました。

 ただ、フルサイズ一眼レフはかなりの値段がするのは事実ですし、レンズもAPS-Cよりも高くなります。また、カメラを変えるよりも撮影や画像編集の技法を覚えた方が写真が良くなる可能性が高いです。それらについてちゃんと勉強していない人であれば、先にそれらを勉強することをお勧めします。

Nikon デジタル一眼レフカメラ D850 ブラック

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  • 発売日: 2017/09/08
  • メディア: エレクトロニクス

Robert Frank"The Americans"レビュー

  • 作品情報
  • 評価
  • 感想

作品情報

The Americans

The Americans

評価

☆☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

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創作と海外の視点を内在化することについて

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 写真やブログ記事などの創作活動をしていて、ネタに詰まってしまうと、ふと思うことがあります。「もし自分が今海外に居れば、撮るネタ、書くネタに困らないのになあ。そうすれば、もっと良い作品が作れるのに」と。

 違う国にいれば、毎日が新しい発見です。自分が留学していた時も、その国の人にとっては何のこともない風景や日常を、毎日撮ったり書いたりしていました。

 留学から日本に帰ってしばらくして、いつしか日本は刺激的じゃないな、面白くないなと思うようになりました。身の回りの風景は特に変わらないし、ちょっとばかり旅行にいったところで、日本語は通じるし、大した違いもありません。そんな中で、徐々に写真や物を書いたりすることが減っていったことがありました。

 そんな自分にとって転機となったのが、とある写真家の作品と出会ったこと、そして500pxという写真SNSに写真を投稿し始めたことです。

 とある写真家とは、ウジェーヌ・アジェ。30年にも渡ってパリの風景を撮り続けた、半世紀以上も前のフランスの写真家です。彼の作品の数々は、美しく古いパリの情景を切り取っており、こんな海外の風景を写真に収められたらな、と思ったものです。

 そこで、ふと気づいたのは、彼にとってパリの風景は見慣れたものであったのではないかということ。日本人の僕の目からすれば、どの写真も新鮮で、好奇心をかきたてるものでした。でも、彼にとっては?長きにわたってパリに住んでいた彼にとっては、写真の数々は見慣れたパリの風景を切り取ったものであり、新鮮なものではなかったかもしれません。

 次に転機となったのは、500pxにアップした写真の中で、評価されていた写真を眺めていた時。その多くが、僕にとっては当たり前の、いわば「日本的な」写真でした。

 そこで僕の中に閃きが訪れました。もしかして、僕が居る場所、居る国といったものは、僕の作品の良さとは関係のないものではないか。僕がアジェの作品がとらえたパリの風景を新鮮に思うように、海外の人も僕のとらえた日本の日常を新鮮に思うのかもしれない。

 そうすると、作品の良さを決めるのは、僕の居場所ではなく、僕が世界を切り取る視点ではないか。仮に僕が日本から離れられなくとも、海外の人々の視点を僕の中に内在化できれば、僕が当たり前の日常として切り捨てているものの中から、海外の人が魅力的だと思うものを切り取れるかもしれない。そして、それが日本人にとっても素敵な日本を再発見することができるかもしれない。ウジェーヌ・アジェが見事にパリの美しい風景を写真で残したように。

 僕の作品の良さは、僕の居場所ではなく、僕の視点によって決まる。

 それに気づいて以来、日常の物事に対する感度が上がった気がします。そして、以前よりも幅広いものを題材に作品を作ることができるようになりました。それによって、僕の作品が客観的にどれだけ良くなったかは分かりませんが、少なくとも、主観的には良くなったと思います。

 みなさんも、海外の視点を意識して日常を切り取ってみると良いかもしれません。日本人にとっては当たり前だけれど、もしかすると海外の人にとっては珍しいかもしれない物事。それは、時に、日本の人にとっても魅力的なものかもしれません。

単焦点レンズのメリット・デメリット・注意点・感想

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はじめに

 みなさん、単焦点レンズを持っていますか?この記事を読んでいるということは、おそらくこれから単焦点レンズを買ってみようと考えているところだと思います。

 そこで、今回は、単焦点レンズを買ってみようか悩んでいると言う方に向けて、単焦点レンズのメリット・デメリット・注意点について書いていきます。あと単焦点レンズを使ってみた感想も書きます。

メリット

すごくボケる

 写真を撮っていて撮りたいのが、すごくボケた写真。こんな感じですね。

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 このような写真を撮るには、f値が小さいレンズを買う必要があります。基本的に、ズームレンズより単焦点レンズの方がf値が小さいので、よりボケます。

 ちなみに、これはこのニコンの単焦点レンズで撮った写真です。

明るい写真が撮れる

 f値が低いということは、同時に光をたくさん取り込めるということです。

 そのため、暗いところでも写真を撮れます。

綺麗な写真が撮れる

 単焦点レンズは、ズームレンズに比べ構造に無理がないので、きれいな写真が撮れます。

価格が安いものがある

 単焦点レンズは、ズームレンズよりも構造が単純であるため、ズームレンズより価格が安いものがあります。

Nikon 単焦点レンズ AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G ニコンDXフォーマット専用

Nikon 単焦点レンズ AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G ニコンDXフォーマット専用

 例えば、ニコンのこのレンズは二万円程で買えます。他のレンズより、ずっと安いですね。

 ただ、焦点距離によっては、すごく高価なものもあったりします。

撮っていて勉強になる

 写真が上手になるためには、色々な撮り方を身につける必要があります。

 ズームレンズでは、あまり動かなくても写真が撮れるのに対し、単焦点レンズは一切ズームができません。そのため、自分で動いて構図を変えると言う、カメラの基本を学ぶことができます。

デメリット

ズーム・パン(ズームの逆)ができないので不便

 ズーム・パンが一切できないので、写真を撮るためには相当動く必要があります。そのため、ちょっと不便なことがあります。

シャッターチャンスを逃してしまう

 例えば、立ち入り禁止の場所などは、撮りたいものがあっても近づけません。そのため、撮りたいものをとれないということが発生します。

 また、近づいて/離れて撮るために移動している間に、シャッターチャンスを逃してしまうということも多々あります。

注意点

焦点距離をよく見て買う

 単焦点レンズは、一切ズーム等ができないので、焦点距離を特に気にして買う必要があります。

 もし、ズームレンズを持っているのであれば、一度自分が買いたいと思っている焦点距離で写真を撮ってみてから買うと良いかと思います。

 初心者であれば、最初は35mm, 50mmのどちらかを買うのが良いかと思います。35mmは割と何でも取れますが、50mmだと、撮る範囲がかなり絞られてくるイメージです。

f値を最小(絞り開放)にばっかりしない

 単焦点レンズは、f値が小さいので、ついついf値を最小にして(絞り開放で)撮ってしまいがちです。

 しかし、f値を変えて、シャッタースピードや写真の明るさをコントロールするのも、1つの表現方法です。絞り開放にとらわれず、時には絞りを大きくしたりして、写真を撮ってもらえればなと思います。

感想

 単焦点レンズを買うと、すごくボケて綺麗な写真が撮れるので、非常に写真を撮っていて楽しいです。また、このような表現はスマホでは不可能であり、一眼・ミラーレスの実力を最大限発揮させるレンズだともいえるでしょう。

 その割に価格も安く、初心者にも手が届きやすいです。

 なお、ズーム等ができず多少不便なことはありますが、それは写真の腕を磨くために必要な投資だと思って、最初は受け入れるのが良いと思います。単焦点レンズに慣れてから、ズームレンズで写真を撮ってみると、今までにない撮り方ができる自分に気づくことができ、そういう意味でも楽しいですよ。

 単焦点レンズに慣れてきたら、状況に応じて、ズームレンズと単焦点レンズを適材適所で使い分けていくと良いと思います。自分は、気合を入れて写真を撮るとき、レンズを変える余裕があれば単焦点、それ以外ではズームレンズを中心に使っています。

 ちなみに、Nikonユーザーであれば、以下の35mm, 50mmの単焦点レンズがおすすめです。

Nikon 単焦点レンズ AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G ニコンDXフォーマット専用

Nikon 単焦点レンズ AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G ニコンDXフォーマット専用

写真とやる気と見知らぬおじさんと

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 僕は写真を撮ることが好きだ。旅行やイベントがあれば必ずカメラを持っていく。旅行やイベントがなくともカメラ片手に写真を撮りに行く。本棚の一角は写真集や写真の撮り方の本で埋まっていて、時折それらを眺めたりする。

 そんな僕でも、写真を撮った後の現像作業は、時折面倒になる時がある。何百枚も何百枚も未編集の画像が入ったカメラを手に持ちながら、これらの写真を現像するのに何時間かかるのだろうと、しり込みする時がある。どうしても、やる気が湧かない時がある。

 そんな時に思い出すのが、ある展望台で出会った名前もしらないおじさんである。

 その日、僕は展望台で夜景を取っていた。カップルや友達同士が景色を眺めている展望台の中で、僕は写真を撮っていた。構図を変えてパチリ。シャッタースピードを変えてパチリ。F値を変えてパチリ。撮った写真を確認しながら、一枚一枚、カメラの中に写真を積み重ねていく。

 しばらく経って、撮りたい写真をあらかた撮り終えて、僕はカメラをカバンの中にしまい、帰りの準備を始めた。

 ふと視線に気づいて見上げると、見知らぬおじさんと目があった。

 僕は目が合った気まずさをごまかすために、おじさんに「こんばんは」と声をかける。大人しそうなおじさんも小さな声で「こんばんは」と答える。

 おじさんの髪にはぽつりぽつりと白髪が生えていて、僕の頭の中に初老という言葉が浮かぶ。近くの机には、おじさんの小さなコンデジがあった。おじさんの手には、このカメラで撮ったであろう写真の小さなプリントが握られていた。

 おじさんは、写真に向けられた僕の視線に気づくと、おどおどしながら手に持った写真を僕に差し出して言った。「この写真、いりませんか」と。「いらないなら大丈夫ですけど」と小声で続けるおじさんを見て、ここで断るのもかわいそうだと思い、「ありがとうございます」と言って僕は写真を受け取る。

 薄いビニールに包まれていたのは、二枚の写真。1つはタワーと赤い月の写真。もう1つは、宙に浮かぶビルの写真。上手という訳ではないけれど、どことなく魅力的な写真だった。

「綺麗な写真ですね。あなたが撮ったのですか?」と僕は問う。おじさんは、褒められたことがほとんどないのか、気恥ずかしそうに「そうです」と答える。僕らの間に、静寂が訪れる。

 僕は近くの机を見る。カメラのそばには、僕がもらったのと同じ、写真の入ったビニールがいくつもいくつも積み重なっていた。

 沈黙が辛くなり、僕は写真をカメラバッグにしまうと、「写真、ありがとうございました。さようなら」とおじさんに言ってその場から立ち去る。おじさんも、「さよなら」と小さく返す。

 展望台を出て、自転車で家に帰りながら、あのおじさんは何だったのだろうと僕は考える。あまり明るい性格ではなさそうで、見知らぬ人に話かけるのは得意ではなさそうだった。でも、おじさんは、配る誰かがいるわけでもないのに、たくさんのビニール入りの写真を持っていた。

 しばらく考えていると、ふと僕の中で一本の線がつながった。おそらく、こういうことなのではないだろうか。

 おじさんは、写真を撮ることが好きだけれど、自分の写真を見せる特定の誰かがいるわけでもない。自分の写真を見て、褒めてくれる人もいない。だから褒められ慣れてもいない。

 それでも、おじさんは自分の回心の写真を、誰かに見てもらいたくなる。見知らぬ他人に話しかけるのは苦手だけれど、それでも、どうしても写真を見てもらいたくなる。だから、誰かに配って見てもらおうとして、プリントした写真を一枚一枚、ビニールに入れていく。写真を見てもらえるだろうかという、たくさんの不安と、ちょっぴりの期待を抱きながら。

 意を決して、展望台に行く。でも、もともと明るいタイプではないおじさんは、写真を渡したいと思っても、なかなか他人に話しかけられなかった。そこで、僕に出会った。

 こう考えれば、おどおどして褒められていない見知らぬおじさんが、僕に写真を手渡してきたのも筋が通る。今となっては、これを確かめる術はもうないのだけれど。

 僕のカメラバッグの中には、おじさんからもらった写真が未だに入っている。時折、カバンから取り出してそれを眺める。そして、その写真から僕は感じるのだ。

 誰にも見てもらえなくとも撮り続ける、おじさんの写真に対する真摯な思いと、僕の写真を見てくれる人がいるありがたさと。

 そして、僕の中に、やる気が満ちていくのだ。

写真を趣味にするメリット・デメリット・注意点・感想

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はじめに

 みなさん、写真を撮ることは好きですか?僕はかなり好きです。

 趣味はなんですかと聞かれれば、真っ先にカメラというくらいには写真を撮ることが好きですね。

 今回は、趣味としてカメラを始めてみようか悩んでいると言う方に向けて、写真を趣味にするメリット・デメリット・注意点について書いていきます。あと写真を趣味にした感想も書きます。

メリット

撮っていて楽しい

 写真は、色々な被写体を色々な方法で撮ることができます。その創意工夫をしているだけで楽しいです。

撮るのが上達して楽しい

 撮った写真はずっと保存していられるので、昔撮った写真と今撮った写真を比較しやすいです。そして、撮った写真を比較すると、自分の実力が向上したのがありありと見えて、達成感がありますし、楽しいです。

見ていても楽しい

 写真は、撮るだけでなく見るだけでも楽しいです。

 撮った写真を見て、その時のことを思い出して楽しくなったり嬉しくなったり。はたまた感動したり。このように、写真を撮ることで思い出を残せるのは本当に素晴らしいことです。

 また、他の人が撮っている写真を見るのも楽しいです。

 例えば、写真家の写真集などを見ていると、その写真に現れている発想が斬新で、見ているだけでも楽しいです。

周りの人に喜んでもらえる

 これは、皆さんが想像しやすいメリットだと思います。イベント等で写真を撮ってそれを友達等に送ってあげると、すごく喜ばれます。

承認欲求が満たされる

 写真をウェブサイトに投稿してコメント等をもらえると、写真を撮るのが一層楽しくなります。

 例えば、500pxというウェブサイトで写真を投稿した時に、見知らぬ外人の方から写真をほめてもらえた時は、本当に嬉しかったです。

 また、地道にフォトコンに応募していると、入賞して自分の名前が載ったりするので、それも魅力の1つです。

色々な経験ができる

 写真が好きになるにつれ、写真を撮るために出かけるようになります。そこで色々な経験ができるようになります。

 僕は、この間キツネを撮りに宮城蔵王キツネ村に行きましたが、間近でキツネと触れ合える経験ができて楽しかったです。

長く楽しめる

 そんなに肉体に負荷をかけなくても、写真は撮れるので、長く楽しめます。

デメリット

お金がかかる

 カメラは、高いです。一眼レフを買ってレンズを買い始めると、簡単に十万円くらいは越します。また、ブロワーやカメラバッグなど、必要になる用具も多いです。

 ただ、「最高のカメラはあなたが今手にしているカメラだ(the best camera is the one you have with you)」と言われるように、カメラを趣味として始めるために一眼レフを買う必要はないです。

 今時のスマートフォンは、かなり性能が良くなっているので、とりあえず趣味として始める分にはそれで十分です。結局のところ、写真を趣味にする上で大事なのは、どんな機材を持っているかではなく、持っている機材で何をどう撮るかという点にあると、個人的には思うので。

alex tan "New Jersey - iPhone Portraits"

New Jersey - iPhone Portraits by alex tan on 500px.com

 例えば、alex tanさんによるこの写真は、一眼レフでもミラーレスでもなく、一昔前のiPhoneで撮られたものです。まさに、機材よりも撮影者の技術の方が大事という好例ですね。

 ただ、色んな機材があった方が可能な表現の幅は広がるという明白なメリットがあるので、結果的に機材が増えていくことはよくあります。

時間がかかる

 良い写真を撮るためには、写真を撮りそれを編集(現像)する技術を高める必要があります。それらの技術を高めるには、たくさん写真を撮るのが一番の近道です。そのため、上手な写真を撮るのには時間がかかります。

 また、写真が好きになると、空いた時間に写真を撮りに行きたくなって、それでまた時間がかかったりします。

 ただ、好きでやっていることなので撮っている間は非常に楽しいですし、そもそも趣味って時間がかかるものですよね。

注意点

写真の技術を向上させるには時間がかかる

 良い写真を恒常的に撮れるようになるためには、色々なことを覚える必要があります。そのため、すぐに綺麗な/美しい写真が撮れるようになるとは限りません。

 また、フォトコンテストに応募したとしても、もしかするとあなたが生まれるよりも前から写真を撮っているご高齢の方がライバルになったりするので、入選するのは非常に難しいです。

感想

 写真は、撮っていても楽しいし、見ていても楽しい趣味です。また、自分が楽しいだけでなく、周りを楽しませることができる趣味でもあります。

 このようにたくさんのメリットのある写真を趣味にしたことは、自分の人生の中でもベストな選択の1つだったと思います。

 そして、むしろもっと早く写真を始めていればよかったなと思うときが多々あります。写真の技術は何歳になっても向上させられますが、一度過ぎ去ってしまった出来事を撮ることは、二度とできなくなってしまうので。

 話は変わりますが、写真は、上記に挙げたメリットがある一方、スマホで撮り始めてみる分にはほとんどデメリットがありません。なので、とりあえず、カメラを趣味にしたいなら、四の五の言わず、スマホで写真を撮り始めれば良いかと思います。ただ漫然と写真を撮るのが嫌であれば、何かしらのスマホで応募できるフォトコンを目指してみれば良いですし、ツイッターで写真専用のアカウントを作って自分の作品をアップしてみるという手もあります。

 ただ、お金があるのであれば、最初から一眼レフやミラーレスを買うという選択肢がベストだと思います。表現の幅はスマホと段違いですので、早く入手できるならそれに越したことはないです。

 そんなカメラですが、一眼レフ・ミラーレスなど様々な種類があるので、自分に合ったものを見つけてもらえば良いかと思います。

 ちなみに、僕はNikonD5000シリーズを初心者の頃に使っていました。どのカメラを買うか迷っている方は、電気屋さんに行ってこのカメラを見てみると良いでしょう。

spaceplace.hatenablog.jp

機械による自動撮影と写真の未来─Google ClipsとParty-Shotに思うこと

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はじめに

 撮影者は、写真を撮るために、シャッターを押す。撮影者は、基本的に観測者にとどまり、写真の中に写ることはありません。アナログカメラでも、デジタルカメラでも、スマホでもそれは変わりません。猿ですら、写真をとるために自分でシャッターを押すくらいですしね。*1

 ですが、写真を「撮る」方法はどんどん増えて行っています。例えば、センサーを仕掛けて一定の条件で写真を撮るようにしたり、動画から1コマを抜き出して写真を切り出したり。ですが、前者であれ後者であれ、どの時点で写真(あるいは写真の元になる動画)を撮るかは撮影者が決めていました。

 しかしながら、それすらも段々と覆されています。

機械による自動撮影について

SonyのParty-ShotとSmart Imaging Standについて

 まず、SonyのParty-Shotは、2009年に初めて発売されたものです。Party-Shotは、顔を認識し、ズームやパンをしながら自動で構図を決め、シャッターを切ることができます。*2約10年前に、Sonyがそんな機能を持つカメラアクセサリーを開発していたなんてびっくりですよね。


新型パーティショット IPT-DS2 & DSC-HX9V

 また、ソニーXperiaを使って同様の機能を達成するSmart Imaging Standというものを発売しています。

 ただ、これらは構図探しの段階では、かなりランダムにカメラを動かして人の顔を探して決めているようです。また、顔認識といっても誰の顔を認識するかは決められません。

Google Clipsについて

 次は、Googleが新しく開発したGoogle Clipsです。このGoogle Cliipsは、ちょうど先月前にアメリカで販売が開始されました。なお、他国での発売について、Googleは明言していないみたいですね。*3

 Google Clipsは、こんな形をしています。

https://storage.googleapis.com/gweb-uniblog-publish-prod/images/Google_Lens-hero_A9xor54.max-2800x2800.jpg A new angle on your favorite moments with Google Clips

 このGoogle Clipsは、人工知能によって、カメラによく映り込む人(撮影者や家族等)の顔を認識します。それらの人を対象に、Google Clips自体がタイミングを決めて撮影し7秒間の短い動画(clip)を作成します。(音声は記録されません。)持ち主はスマートフォンでその動画を取得することができ、また、その中の一場面を写真として切り出すこともできます。ただし、レンズ自体は単焦点なので、ズームをすることはありません。

 Google Clipsの詳細な説明は、以下のリンクか動画を参照してください。
速報:新発想カメラGoogle Clips発表。家族やペットを認識、自動で決定的瞬間を残すAIカメラマン - Engadget 日本版


Google Clips | A new way to capture and save moments

 ここで強調したいのが、動画から切り出す写真を決めるのは人間とはいえ、動画自体の撮影のタイミングは機械が決めるのであり、それは今までの撮影法と異なっているという点です。そして、自動撮影であるがゆえに、撮影者自身が、非常に簡単に写真に写ることができるのです。

 これらの機器は、撮影者が撮影のタイミング(と構図)を決めるという写真の原則を変える、非常に革新的なものであると言えるでしょう。

Prosthetic Photographerについて

※2018年3月6日追記

 この記事を当初書いた時に想像していたようなデバイスが登場しました。様々な写真を学習したニューラルネットワークが、良い構図となったときに人間にシャッターを押させるというもの。詳細は、以下の記事からご覧になれます。

www.gizmodo.jp

 技術の進歩って早いですね。電気ショックを流して人間にシャッターを押させると言うのが、研究段階ということもあって荒いですが、まさに写真の未来に一歩近づいているような気がしますね。

写真の未来について

 まず、機器の性能的な面で言えば、どんどん性能は高まっていくと考えられます。Party-Shotという前例がある以上、Googleもやろうと思えば、Google Clipsにも構図を決める機能を持たせることはできるでしょう。(物理的に構図を決めるのか、デジタルズームで構図をきめるのかは分かりませんが。)

 また、顔の認識能力や構図を決める能力は、両者も改善されていくと考えられます。前者については、ここ最近のDeep-Learningの発展を見ていれば明らかです。後者については、Googleの画像評価技術NIMAという実例が存在します。さらに、NIMAを応用すれば、人だけでなく、風景等についても自動撮影ができるようになると考えられます。

 このような機器の登場を受けて、写真の未来はどう変わっていくのでしょうか。短期的には、これらの機器を買って自動撮影を行おうとする人はそれほど多くないでしょう。いずれの機器であれ、追加でお金を払って機器を買ったうえで、わざわざ撮影するために機器を準備しようとする人は、多くないと思われますから。

 しかしながら、例えばGoogle Clipsと同様の機能が、スマートフォンのアプリとして開発されたら─普段持っているスマホを立てかけて、手軽に自動で撮影できるとなれば─多くの人が利用するようになると僕は考えます。また、スマホで動画を取るように動かすと、自動的に良い感じの1コマを写真を切り出してくれるアプリがでたら、かなり売れそうですね。

 なお、初めて本記事を執筆してから数ヶ月後、実際にそのような機能を持ったスマートフォンSharpから発売されました。*4本当にテクノロジーの進歩は早いですね。

 しかし、かっこよく/かわいく写真に写りたいという欲求がある以上、ポーズをとった上で、従来のようにシャッターを押して写真を撮るという行為はなくならないように思えます。ということで、両者が並存する未来が、近い将来登場するのではないのかと、勝手に想像しています。

 次に、人以外の写真を撮るということについて考えてみると、特定のものにカメラを向けるだけで上手に写真を撮るアプリが開発されれば、それを利用する人は少なくないのではないかと僕は思います。誰だって、上手に写真を撮りたいものですしね。

 しかしながら、趣味あるいは職業として写真を撮っている方は、こういう自動撮影はあまり積極的に使わないのではないでしょうか。理由は以下の3つです。

①自動撮影は(おそらく)おもしろくないため
 プロであれアマチュアであれ、写真を続けている理由の1つは、根本的に写真を「撮る」ことが好きだということがあるように思います。そういうような人々が、単にカメラを設置するだけで満足するとはとても思えません。

②自動撮影では個性を出せないため
 趣味で写真を撮る場合、自分だけしか取れない写真を撮りたいというのが一つの欲求となるところ、機械で自動撮影しても、同欲求は満たされません。また、プロとしても、個性のない写真では、写真家としての個性を発揮するのは難しそうです。そもそも、人工知能で美しい写真を決めるにしても、人間を基準とした教師データが必要となるはずなので、新しい表現を作ることは難しそうですね。

 ただ、カメラ台数や配置方法等では、今までになかった表現が可能になるかもしれません。

③機器への信頼性に問題があるため
 自動で写真を撮ってもらえるのは確かに楽です。しかし、人工知能を用いて撮影する以上は、その仕組みがブラックボックス化するおそれが多分にあります。そのような作動原理がわからず100パーセント信頼できないものに、貴重なシャッターチャンスを任せるとも思えません。

 以上のように考えてみると、機械の自動撮影によって結構写真を撮ると言う行為の一部が、自動撮影に置き換わっていくように思います。それが、自動的にシャッターを押すことなのか、動画の中から自動的に良い1コマを切り出すことなのかはわかりませんが。

 ただ、写真を趣味/仕事とするような人が、自動撮影を多用することは、それほどなさそうな気がします。

関連記事: spaceplace.hatenablog.jp