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宇宙法とは何か─宇宙法入門

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はじめに

 皆さん、宇宙法とはどういうものかご存知でしょうか。たぶん、ほとんどの人は聞きなれない単語であると思います。

 そこで、今回は宇宙法についてご紹介したいと思います。

 なお、宇宙法は、法学の他の分野と同様に専門的であり、非専門家による記述が不正確になりがちな分野です。そして、この記事も、非専門家による記事という点では同様です。

 そのため、可能であるならば、以下の専門家による本をお読みになることを強くおすすめします。

・宇宙ビジネスのための宇宙法入門
 こちらは、学習院大学の小塚荘一郎教授と、日本の宇宙機関である宇宙航空研究開発機構(JAXA)の佐藤雅彦さんが編集し、その一部をお書きになった本です。

宇宙ビジネスのための宇宙法入門

宇宙ビジネスのための宇宙法入門

・日本の宇宙戦略
 こちらは、慶應義塾大学大学院の教授であり、宇宙法研究センター副所長でもある青木節子教授がお書きになった本です。分かりやすい書籍ではありますが、出版年が2006年とやや古いです。

日本の宇宙戦略

日本の宇宙戦略

 なお、本記事は分かりやすくするために、用語の正確性が犠牲になっている部分があります。この点ご了承ください。

宇宙法とは何か

 まず、宇宙法とは何かということについて、宇宙法の分類を通じて見ていきます。

 宇宙法は、国際法である国際宇宙法と国内法である国内宇宙法に分けられます。また、国内宇宙法には、日本やアメリカなど、各国の国内法が含まれます。*1

 以下では、国際宇宙法と国内宇宙法を順に見ていきましょう。

国際宇宙法

 宇宙法の中ですぐにイメージされやすいのが、国際宇宙法です。国際宇宙法を大別すると、条約・国際慣習法・法の一般原則(これらは法的拘束力がある)と、国連決議などのソフトロー(法的拘束力がない)に大別されます。

 ざっくり言うと、条約・国際慣習法・法の一般原則は権利義務等を定めているもので、違反すれば国際法違反になります。これに対し、国連決議などのソフトローは、法的拘束力がないので、従わなくても国際法違反にはならないのが原則です。*2

条約・慣習国際法・法の一般原則

 そもそも、国際法のうち法的拘束力のあるものは、条約・慣習国際法・法の一般原則です。本記事において、これらを説明するのは分量の関係から不可能なので、国際宇宙法の分野において「慣習法に対して圧倒的に優位を示している」条約*3について説明します。*4

国連宇宙諸条約

 数ある宇宙法の中でも、特に重要なのが、国連宇宙諸条約です。国連の宇宙諸条約は以下の5つです。*5

・宇宙条約
 宇宙条約は、1967年に発効した、国連宇宙諸条約の中で最初に作られた条約です。*6 宇宙法と言うと、ルールが定まっていない/新しいというイメージをお持ちかもしれませんが、実は国際宇宙法について言えばかなり古くからあります。

 宇宙条約は宇宙の探査や利用の原則を定める、国連宇宙諸条約の中で一番重要な条約です。*7

 例えば、宇宙の探査利用の自由(1条)、宇宙の領有禁止(2条)、天体の平和利用(4条)などの原則が規定されています。

・救助返還協定
 救助返還協定は、他国の宇宙飛行士*8が自国に不時着した場合に救助したり(2条)、他国の衛星やロケットが自国に落ちてきたときに回収して、打上げた国*9に返還したり(5条2項・3項)すること等を定めた条約です。

・宇宙損害責任条約
 宇宙損害条約は、衛星やロケットなどの宇宙に打ち上げられた物体が損害を引き起こした時の損害賠償責任等について定めた条約です。

・宇宙物体登録条約
 宇宙物体登録条約は、ロケットや衛星などを国連の登録簿に登録するよう定めた条約です。

 日本も以上の4つの条約の締約国なので、はやぶさ2も登録されています。以下が、実際の登録簿となります。*10

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・月協定
 月協定は、月や太陽系の他の天体について様々な原則を定めた条約です。しかし、上記の4条約と違って、日米露中といった宇宙開発先進国が締約国ではなく、締約国も17か国しかないので、あまり影響力のない条約です。

 なお、条約の締約国は、以下の国連のページで確認できます。 http://www.unoosa.org/documents/pdf/spacelaw/treatystatus/AC105_C2_2017_CRP07E.pdf

その他

 他にも、様々な条約が存在します。国際宇宙ステーション協定や、ケープタウン条約の宇宙資産議定書などです。

 興味のある方は、以下のJAXAのページをご覧ください。
宇宙法/TOPページ

ソフトロー

 法的拘束力のないソフトローにも、様々なものが存在します。2007年国連COPUOSスペースデブリガイドラインや、リモート・センシング原則といったものが有名ですね。

国内宇宙法

 私人が宇宙活動をする上で重要になってくるのが国内法です。例えば、ロケットの打ち上げの許可を定める法律などが典型例ですね。また、国家にとっても国内法が重要なことは、言うまでもありません。

 日本以外にも、米国などの国々は宇宙に関する国内法を有していますが、今回は割愛します。

 日本法にも、宇宙に関する様々な法令が存在します。その中でも一部を紹介します。

宇宙基本法

 日本の宇宙活動の基本理念等を定めているのが、宇宙基本法です。*11条文は、以下のリンクからご覧になれます。
e-Gov法令検索

 本法では、宇宙の平和的利用(2条)や産業振興(4条)といった理念が定められています。

 また、国の宇宙開発利用に関する基本的な計画(宇宙基本計画)の策定が義務付けられています。(24条)

 宇宙基本計画については、以下のリンクからご覧になれます。
宇宙基本計画 - 内閣府

人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律

 ロケットの打ち上げなどに関わってくるのが、2016年に成立した人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律です。条文は、こちらからご覧になれます。
http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo/2016/nov.3/h281116/gifs/g111160003.pdf

 本法は、人工衛星等の打ち上げの許可、人工衛星の管理の許可、第三者の損害賠償等を定めています。

衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律

 人工衛星からの地球の観測(衛星リモートセンシング)等に関わってくるのが、2016年に成立した衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律です。条文は、こちらからご覧になれます。
https://kanpou.npb.go.jp/old/20161116/20161116g00252/20161116g002520011f.html

 本法は、衛星リモートセンシング装置の使用に係る許可(4条)、衛星リモートセンシング記録の取扱いに関する規制(18-20条)等を定めています。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したのは、宇宙法の世界の表層すぎません。本記事で宇宙法にご興味を持った方は、先ほど紹介した書籍等をご覧いただけると良いでしょう。

宇宙ビジネスのための宇宙法入門

宇宙ビジネスのための宇宙法入門

日本の宇宙戦略

日本の宇宙戦略

*1:例えば、慶應義塾大学宇宙法センターが編集した「宇宙法ハンドブック」では、宇宙法が第1部国際宇宙法、第2部外国法、第3部日本の宇宙関連法というように分類されています。前者は国際法、後二者は国内法です。慶應義塾大学宇宙法センター編集「宇宙法ハンドブック」4-6頁。

宇宙法 ハンドブック Space Law Handbook

宇宙法 ハンドブック Space Law Handbook

*2:ただし、ソフトローの内容が慣習国際法となれば、それに反すると違法となります

*3:青木節子「日本の宇宙戦略」55頁

*4:これらの点に興味のある方は国際法の教科書か、青木教授の「日本の宇宙戦略」53-56頁をご覧ください。

*5:条約の条文を見たい方、条約の正式名称をお知りになりたい方はJAXAによる以下のリンクを参照ください。
宇宙法/TOPページ

*6:http://www.unoosa.org/oosa/en/ourwork/spacelaw/treaties/introouterspacetreaty.html

*7:このことは、宇宙条約の正式名称が「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」ということからも分かります。宇宙法/TOPページ

*8:正確にはthe personnel of a spacecraft=宇宙船の乗員ですが、分かりやすくするためにこのような表現にしています。

*9:正確には打上げ機関の代表者です。

*10:ST/SG/SER.E/766 - Registration information on space objects launched by Japan

*11:1条参照

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