本やらなんやらの感想置き場

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【高校生・大学生向け】宇宙法の勉強法

はじめに

 僕は、大学の学部4年間、宇宙法を学んでいました。そこで、これから宇宙法を学びたいと思っている大学生/高校生向けに、自分が勉強しておいてよかったな、という分野について紹介したいと思います。

※国際宇宙法の調べ方についてはこちら
【高校生・大学生向け】国際宇宙法の調べ方 - 本やらなんやらの感想置き場

宇宙開発

 当然ですが、宇宙法は宇宙開発に関連する法です。そのため、ロケットや衛星などの基本的なことが分かっていないのに宇宙法を学んでも、実態からかけ離れてしまう恐れがあります。

 この文を読んで、宇宙法が好きなら宇宙開発も当然好きだろう、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、宇宙法勉強してみたいけど宇宙開発にはあまり興味がない、という方もいらっしゃいます。

 念のため付言しておきますが、誰しも最初は何も分からない状態から始まるのですから、宇宙開発を知らずに宇宙法に興味を持っても何も悪いことはありません。むしろ、宇宙開発についてあまり知らない人の方が、宇宙法の勉強との相乗効果で、宇宙開発について知るのがもっと楽しくなるかもしれませんね。

 宇宙開発を知るうえで便利なのが、宇宙系のニュース記事をまとめてくれるこの週刊のメルマガです。とりあえず、これに登録してみると良いでしょう。

www.mag2.com

 また、宙畑と呼ばれるニュースサイトにも宇宙の最新のビジネス情報が載っていておすすめです。

 加えて、英語ができるのであれば以下のニュースサイトがオススメです。

・SpaceNews
 宇宙開発のビジネスと政治について扱っているのがこのSpaceNewsです。 spacenews.com

・Space Policy Online
 宇宙開発政策について扱っているのがこのウェブサイトです。

SpacePolicyOnline.com – Your first stop for news, information and analysis about civil, military and commercial space programs

語学

 宇宙法を学ぶ上で極めて重要なのは、英語です。

 宇宙法の一分野である国際宇宙法は、国際法です。そして、宇宙条約などの国連諸条約の正文(正式な文書)は日本語では書かれていません。なので、ちゃんと条約を学ぶためには、英語などの国連の公用語を学ぶことが必須になります。

 また、日本語で書かれている宇宙法の文献はそれほど多くないので、英語ができると調べられる幅がぐんと広がります。また、他の分野でも英語ができると調べられる幅がぐんと広がるので、英語は何よりも頑張っておいた方が良いです。

 さらに、国際法を学ぶ上でフランス語は非常に役立つので(例えば、国と国が裁判する国際司法裁判所というところでは、英語とフランス語が公用語となっています)、余裕があればこちらも学ぶと良いです。

 また、英語やフランス語以外の言語も分かると、その国の宇宙に関する国内法を読むことができるようになるので、理想を言えば、英語やフランス語以外の言語もできると良いでしょう。なかなかそちらに勉強時間を割くのは難しいでしょうが。

国際宇宙法について

国際宇宙法の条約等

 とりあえず、国際宇宙法について勉強してみたければ、まずは条文を読むことをお勧めします。

 慶應義塾大学の宇宙法研究所による以下のページには、宇宙法の条約等がまとめられています。

https://space-law.keio.ac.jp/pdfdb/

 また、お金に余裕があるのであれば、宇宙六法を買うのも良いでしょう。

宇宙六法

宇宙六法

  • 信山社出版
Amazon

おすすめの書籍

 次に、国際宇宙法について勉強したいのであれば、まず以下の書籍を読むと良いです。

その後、英語が得意であれば、以下の文献を読むと良いです。

 結構前に出版された本ですが、Bin Cheng教授という宇宙法の第一人者の方が書いており、各条約の起草過程等が丁寧に説明されています。

 これらを読み終わったら、ネット上には様々な宇宙法の論文等があるので、それらを読んでいくと良いと思います。

おすすめのウェブサイト

 宇宙法を学ぶに当たって便利なのが、外務省のウェブサイトです。かなり色々な情報が載っています。 

宇宙|外務省

 また、英語が読めるのであれば、国連宇宙平和利用委員会のページに宇宙法について説明が載っているので、そちらも参照すると良いです。 www.unoosa.org

おすすめの活動

 また、一人で勉強していてもなかなかモチベーションが上がらないと思いますので、例えば、宇宙関係のサークルに入ったり、国際法のゼミで宇宙法の卒論を書いてみたり、大学で宇宙法の授業をとったり(慶應義塾大学などは宇宙法の授業があります)、宇宙法模擬裁判という宇宙法の大会に出てみたりすると良いでしょう。

 宇宙法模擬裁判について興味がある方は、記事を書きましたので良ければご覧ください。

spaceplace.hatenablog.jp

 このページに書かれているように、大学の国際法の模擬裁判サークルや、都内のインカレサークルが出場しているので、興味がある方はそういうところに所属すると良いでしょう。

イベント

 たまに、宇宙法に関するイベントがやっています。そういうものに参加してみるのも良いでしょう。

 学生向けのものとして、毎年夏に学生団体が開催している宇宙開発フォーラムが、時折宇宙法を扱っています。

 また、慶應義塾大学の宇宙法研究センターが、宇宙法に関するセミナーを時折開催しています。

国際法

 国際宇宙法は国際法の一分野なので、国際法について学ぶ必要があります。

 法学部であれば、どの大学でも基本的に国際法の授業があるかと思うので、取れるならそれを取ると良いでしょう。

 また、国際法について、全く勉強したことがないというのであれば、まずこの書籍を読むのがおすすめです。

国際政治

 国際法は国際政治学と密接に関連しているので、余裕があれば国際政治を学ぶと良いでしょう。

 国内で刑法等に違反した場合と違って、国際社会だと国際法に違反したからすぐに裁判をするという訳にはいきません。法に違反するというのがどういう意味合いを持つかについて知るためには、国際政治を学ぶ必要があるのです。

 また、宇宙に関する条約は国が交渉して作られるものなので、国際政治を知っているとなぜ条約ができたのか理解しやすくなります。

 国際政治については、大学の国際政治の授業の教科書にもなっている、以下の書籍をオススメしておきます。

国内宇宙法について

おすすめの書籍

 国内宇宙法については、まずこちらの書籍をご覧になると良いかと思います。

 その後、余力があればこちらをお読みになっても良いかもしれません。

 この本は、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)や衛星リモートセンシング記録の適正な取り扱いの確保に関する法律(衛星リモセン法)を逐条解説した本です。この本は、これら二法の解説本としては現時点の決定版かと思いますが、内容がこれらの法律の一条ごとの解説となっており、かなり専門的です。一通り行政法の基本書を読んでから読むことをお勧めします。

 詳細なレビューはこちら

 加えて、弁護士の観点から書かれた国内宇宙法の書籍については、以下があります。特に弁護士を目指している方であれば、こちらを読んでみるのも良いかもしれません。

また、世界各国の国内宇宙法についてはこちらをご覧いただくと良いでしょう。

おすすめウェブサイト

 特に、内閣府のページには、宇宙基本法を含む様々な情報が載っているのでおすすめです。
宇宙政策 - 内閣府

六法

 国内宇宙法は、国内法です。なので、国内法を学ぶのが必須になります。そのため、高校生であれば、法学部に進学するのが良いと思います。また、条文の解釈を学ぶという意味でも、しっかりと六法を学ぶと良いでしょう。

 具体例を挙げれば、宇宙の平和的利用を考える上で、憲法9条の知識が必須になります。また、ロケットの打ち上げ契約は民法や商法が問題になり得ます。さらに、国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が犯罪を起こした場合、宇宙基地協力協定が問題となるとともに、各国の刑法が問題になります。

行政法

 日本の宇宙機関であるJAXAは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法という行政組織法が根拠となっています。また、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律によるロケット打ち上げの許可を考えるにあたっても、行政法の知識が必要になります。

 行政法について、しっかりとした教科書を探しているのであれば、行政法の大家である宇賀教授が執筆した以下のシリーズがおすすめです。全3巻なので分量は多いですが。

まとめ

 たくさん書いてきましたが、やることはシンプルです。英語を学んだうえで、6法+国際法+行政法を学ぶ。法学部に進学して4年間学べば、この全てをカバーできます。

 そのうえで、自分又はサークル等で宇宙開発と国際宇宙法・国内宇宙法について学ぶ。特に、本記事で何度か紹介させていただいた以下の書籍は最初の一冊として最適なのではないかと考えられますので、一通り目を通して勉強するのがおすすめです。

 6法+国際法+行政法+宇宙開発+国際宇宙法+国内宇宙法のを全て最初から勉強するとなると、勉強することが非常に多くて嫌になるかもしれませんが、これはあくまで理想のお話です。それに、この順番で勉強しろ、ということも特にないので、興味がある国際宇宙法・国内宇宙法から初めて、(大学の授業を頑張りつつ)他の分野にも手を広げていけば良いかなと思います。

 なお、当然ですが宇宙法の授業がある大学・大学院に進学できるのであれば、そちらに進学するに越したことはありません。その場合、進学するまでは、当面受験勉強に専念するのが最適だと思います。特に、慶應義塾大学は宇宙法研究所を有し、法学部では国内トップクラスの宇宙法の授業を受けられますので、あなたが高校生であれば、まず慶應義塾大学の法学部を目指すというのが有力な選択肢になるでしょう。

 仮にあなたが宇宙法の研究者を目指したいという気持ちが少しでもあれば、宇宙法を専門とする教授がいる大学・大学院に進学することは必須だと思います。そもそも、研究者が論文を書くというのは、ある種の職人芸です。ただの学生が独学で研究者になれるほど研究者の世界は甘くありませんし、何事も先達に教えを請うのが近道である事も多いです。

 宇宙法が勉強できる大学の情報については、以下のページをご覧ください。

宇宙法が学べる大学をざっと調べてみた【2022年度版】 - 本やらなんやらの感想置き場

 実際に大学4年間で宇宙法を勉強とした感想としては、面白かったですよ。やっぱり。知れば知るほど、宇宙法の奥深さが分かって楽しかったです。あなたの宇宙法ライフが充実したものになることを、心から祈っています!

※当ブログにも、軽く宇宙法について説明している記事があるので、よければこちらもどうぞ。また、国際宇宙法の調べ方についてはこちら