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円城塔「リスを実装する」─創造者と被造物の関係について

作品情報

 本書は、kindle専用みたいですね。

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 円城塔さんの短編「リスを実装する」のレビューです。

 本書を読んで抱いた感想は、被造物が被造物であると確信するのは不可能ではないか、ということであり、我々が被造物でないと確信することもまた、不可能ではないかということです。

 お読みになったら分かる通り、本書はリスを自動化して実装する話です。創造者たる野実実は、マークというリスを自動化して実装します。リスは、マークが作ったルールに従って行動し、存在する世界が変であるとか、自分の創造者が誰であるか考えることはありません。

 そして、野実実もまた、「円城塔」という創造者によってつくられた被造物です。野実実と被造物たるリスが、同様に被造物であることは、野実実が夜の22:00に眠りにつくという円城塔が定めたルールの通りに従って行動していることから示唆されます。

 このように、ルールと入力とランダム要素によって設定された被造物は、マークのように複雑な順番で行動することになります。つまり、複雑性そのものは、被造物ではない、ということを担保しないのです。

 では、私たちの存在そのものはどうなのでしょうか。私たち人間も、複雑な行動をとることができますが、それが決められたルールと入力とランダム要素によって構成されていないと言い切ることは難しいのではないでしょうか。というか、そもそも人間は、DNAによって決められたルールと、DNAが決めたルールを決めて変更し廃止するルールと、入力と、ランダム要素によって構成されているのですから、もしかすると、コンピュータ上にプログラムされた存在かもしれませんよね。

 そんな、創造者と被造物の関係性について、本書を読んで思いをはせたのも、以下の文章があったからでした。

マークはランダムに夢を見、覚める。自分が夢の中のマークに移動したのか、森が夢の中の森に変化したのか、マークは知らず、野実も知らない。マークは最初のdream=0の地点からdream=-1の森に覚めることができ、また夢をみてdream=0に戻ることもできる。どこまでも覚めていくことが可能で、整数値が許す限り、どこまでも夢を見ることができる。

夢というものを考えてみれば、夢自体が被造物で、夢を見ている人が創造者と考えることもできますよね。そして、夢が夢であること=自分が被造物であることは、夢の中=現在の自分の世界では気づくことができません。そして、究極の創造者が-無限、究極の被造物が無限の値を取るとしたときに、自分が創造者、被造物のどの部分にいるかどうかなんて判断することはできません。

 私たちって、dreamいくつの地点にいるんでしょうかね?

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