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草野原々「大進化どうぶつデスゲーム」感想:謎展開。

作品情報

大進化どうぶつデスゲーム (ハヤカワ文庫JA)

大進化どうぶつデスゲーム (ハヤカワ文庫JA)

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)  

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作はかなり謎な作品でした。草野さんの前作の「最後にして最初のアイドル」も訳が分からないところがある作品でしたが、本作はそれに輪をかけた作品であるように感じました。

 舞台設定や物語の目的がカオスな部分についてはとても楽しく読めました。ヒト宇宙とネコ宇宙の戦いが始まり、グロテスクなギミックが出てくる中JKが戦う。草野さんの趣味が全開で暴走気味なあらすじは、極めてユニークで面白かったです。

 ただ、物語の展開については、よく分からない部分も多く謎でした。特に、ラストの陽美が反物質爆弾になるシーン。伏線もなく、いきなり人間が反物質爆弾になるという話からしてよく分かりませんし、リアの持っている技術力が不明なだけに他に手段がなかったのかとツッコミを入れたくなりました。ただなんとなく登場人物が殺されたような印象を受けたのが残念でしたね。自己犠牲を描くにしろ、もう少し説得力のあるシーンも描けたのではないかと思ってしまいました。例えば、陽美がリアの作った爆発する兵器を抱えて自爆するといった方が、よっぽど常識的でスムーズな展開ですよね。

 前作と違って、このような違和感を抱くのは、前作は徹底してカオスな世界観であったのに対し、本作が青春ものというある種常識的な要素を備えていたからでしょうね。JK、青春、恋愛、サバイバル、怪物、世界の危機、それを救う主人公。ヒトに見えない何かよりも、ヒトに似た何かの方にむしろ強い違和感を感じる不気味の谷現象のように、普通の物語らしさのかけらもない前作よりも普通の物語の体をまとったカオスな本作の方が違和感を感じるということなのでしょう。

 本作の終わり方は、次回作を示唆するようなものでしたから、続刊もあるのかもしれません。次巻以降で設定が詳細になって、本作の物語により説得力が生まれるといいなと思いました。