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綾辻行人「どんどん橋、落ちた」感想

作品情報

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、普段ミステリーを読まない自分にとっては、こんなの分かるかって難易度のフーダニットでしたが、解答が合理的かつ斬新で、非常に面白いミステリーでした。作品の中で提示されている「地の文では嘘をつかない」などのルールに一切違反しないながらも、いかにそれをうまく利用するかを徹底的に追求した作品でしたね。

どんどん橋、落ちた

 犯行を行なっていたのはまさかの猿だったというオチ。確かに、合理的に考えれば人間には犯行が不可能な状況でしたが、それでも猿がユキトを殺害したなんて誰が考え付くのかというレベルです。完全にお手上げの状況で解決編を読みましたが、斜め上の方向から解決が降ってきましたね。

 ただ、ユキトを殺害した一個体を特定するという物語の構造がある以上、それから逆算して猿のエラリイが殺人を行なったと考えるのも不可能ではないと読みながら思いました。

 こんなのありかと思ったと同時に、こんなのよく思いついたなと思った作品でした。こういう推理小説の枠を広げてくれるような作品は、とても面白いですね。

ぼうぼう森、燃えた

 本作を読み終わってまず思ったのが、犬が色盲だっていうのは社会常識だったのか...という事です。それがネックだったこともあってXを特定できなかったので。まあ、作中の解決編の前にフォローされているので、ここの部分を読んでからXを特定しても良いのでしょうね。

 『死ね』という部分のカギカッコが二重になっていたのは気づいたので、Xはてっきり犬だと思っていましたが、まさかの犬語を操る人間というオチ。犬と人間が自由に話せるなんてファンタジーじゃんと思いましたが、そもそも犬が喋る時点である種のファンタジーなのですから、そこに深く突っ込むのも野暮というものでしょう。

フェラーリは見ていた

 今度はフェラーリが馬だったというオチ。別にフェラーリが車だったとしても作中の会話に矛盾は生じないかと思いますが、犯人を一人に特定するためには、逆算してフェラーリが生き物であるという条件が必要があり、そこから犯人を特定できるというお話でしたね。確かに、これはこれでルールに従った合理的解決ですね。

 あと、タイトルが一番のヒントになっているのも鮮やかです。解決編を読むまでただの比喩表現だと思ってました。

 で、結局のオチである犯人は同じ村の少年だったというのが面白かったですね。そりゃ現実は物語のようにうまくはいかないですよね。

伊園家の崩壊

 やたらと設定が凝っているなと思っていたのですが、最後まで読んでこれは某国民的アニメのオマージュだという事にようやく気づきました。登場人物の名前がそのアニメの登場人物のもじりですしね。本筋以外のところでかなり攻めてるなあ。この作品。

 さて、謎について見れば、福田笹枝の死に関するトリックは自分で推理できたので、猫の死の部分は放っておいて意気揚々と解決編を読みました。その結果笹枝自身が犯人と答える問題ではないという事を読んで、やられたと思いましたね。確かに、「殺害事件」という表現であればそうなりますね。猫の殺害の犯人及び若菜の自殺についても、非常に合理的な解決がなされていて、作者に全面降伏という感じでした。

 本作品集の中で一番面白かったです。

意外な犯人

 本作を読んだ中で一番やられたと思ったのが本作です。舞台設定をいじることによって、ADやプロデューサーだけではなくカメラマンの存在そのものを導き出す。短編ながらうまいこと意表をついていて、ちょっと触っただけでも出血してしまいそうな切れ味の作品ですね。

 そして、犯人の名前を答えさせるというところにもう1つのトリックがある。解決編を読んだ時に、スポーツで完敗した時のようなある種の爽快感がありましたね。