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円城塔「エピローグ」─想像力が、爆発する

作品情報

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

 本作はSFマガジンに連載されていた作品です。本作と対になるのが、同時期に文學界で連載されていた「プロローグ」です。

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)
※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 「プロローグ」が私小説であったのに対し、「エピローグ」は本格的なSFでした。本作は、僕の想像力を爆発させるような作品で、読んでいるだけでワクワクが止まりませんでした。

 OTC(オーバーチューリングクリーチャ)、宇宙の解像度、シチュエーション料理、イグジステンス・アズ・ア・サービス。並みの頭では決して思いつかないような概念が、所せましに並べられて、本作の物語は計り知れない魅力に満ちています。この感じは、「バナナ剝きには最適の日々」の中の短編、「コルタサル・パス」を思い出させますね。

 さて、本作は円城塔さんの作品としては優しいことに、物語の所々に設定の解説が入っています。

 それらを含めた本書の要約は、以下の通りになります。

 朝戸はOTCである(10頁)。朝戸はラブストーリー向け汎用登場人物である(8頁)。榎室春乃は物理宇宙に住んでいる(27頁)。榎室春乃はもういない(28頁)。アラクネはスマート・マテリアルで構成されるOTCである(36頁)。現実世界はOTCの制宙下にある(38頁)。人間はそのままで現実世界に立つことはできない(38頁)。OTCにより現実宇宙の解像度は200倍程度鮮明になった(42頁)。OTCによる侵攻により人類は120億人の人口を餓死により失った(44-45頁)。スマートマテリアルは人間に理解できない(28頁)。スマートマテリアルは数学的秩序を超越し時間や空間をも規定しなおす(54頁)。イグジステンスは多宇宙間企業である(76頁)。イグジステンスは宇宙間の環境の差異を処理するサービスを提供する(78頁)。イグジステンスは存在そのものを実現可能(79頁)。既知可能宇宙の全てで同時刻にイグジステンス会長は脳梗塞により死亡した(85頁)。アラクネのスマートマテリアルの構成比率は日々変動する(96頁)。朝戸の奥歯のタブレットは通常の脳の別種の視点からデータを記録する(112頁)。「小説」と呼ばれるソフトウェアは絶滅を危惧されている(131頁)。「テラ」は無意味語になりかけている(138頁)。テラではイザナミ・システムがまだ稼働している(138頁)。 宇宙奪回戦艦はほとんどスマートマテリアルでできている(150頁)。ストーリーを編集する主体のように超越的視点を持った存在はインベーダーと呼ばれているものとなる(180頁)。OTCを捕食するのがインベーダーである(185頁)。クラビトの妻はインベーダーである(181頁)。本書を読んでいる私たちはストーリーライン外宇宙にいる(192-193頁)。インベーダーの餌はアイディアである(197頁)。朝戸はストーリーラインをねじ曲げる(211頁)。榎室春乃はイザナミ・システムの設計責任者(213頁)。OTCの興味は人類から急速に薄れつつある(217頁)。オリジナルの朝戸はOTCとのラブストーリーを目指していた(219頁)。イザナミ・システムは全ての数字に自然言語としての意味を対応させるようなマッピングである(224頁)。テラは人類故郷の星(221頁)。進行中の連続殺人事件は登場人物を不公平に消去したことにより生じた(246頁)。イザナミ・システムは退転の直後にエージントと融合された(249頁)。OTCの正体は人類発祥以前の宇宙の想起(252頁)。宇宙奪回艦隊はイザナミ・システムから独立した(283頁)。スマートマテリアルとは、ストーリーラインのことである(309頁)。イザナミ・システムは嘘っぱちであって、可能性の全体に過ぎない(317-318頁)。この宇宙は、『語り得ることの総体』である(318頁)。榎室春乃たちが設計した「登場人物の存在を可能にする言語」を用いる登場人物[=イグジステンス社が新しい言語を開発し、登場人物[=OTC?]を生み出した(319-321頁)。新しい登場生命による言語は人類を殺すように作用し登場生命自体を生かすように作用した。(321頁)そのため榎室春乃たちは新たに可能になった登場人物たちを殺せる言語を造ろうとしたが新しい登場生命はそれにより殺される以上の生命を生み出した。(322-323頁)連続殺人事件の犯人は「時間」だった(324-326頁) 朝戸はラブストーリーそのもので奈緒?は反ラブストーリーだった。(335-336頁)朝戸は榎室奈緒に会おうと考えている(337頁)。

 ここまで本作を振り返ってみれば、本作が何を表した小説であったのか、皆さんはもうお分かりでしょう。

 ちなみに、僕は何も分かっていません。

 結局、抱いた感想としては、本作は円城塔さんの想像力が爆発した作品だったなと思います。様々な概念が緻密に積み上げられると同時に解釈の余地が多分にあり、読者は多くの点で設定を理解するとともに本書の設定を全く理解することはできません。本作は何か深淵なる真理を表しているように思える一方で、単に支離滅裂な物語とも思えます。本作の解説すら三百四十四頁で読者がよく分からない途方なものが鎮座している感覚を抱くものだとしておりここで感想を書いている私もそんな感じの物語であると思うと同時に本当にそうなのかそれと思います。とりあえず解説で何か理解できない凄いものが神であり世界であると言われればそんなような気がする一方でそれは正しいのかと考えます。例えば私がこのまま何千字も意味不明な文字列を並び立てればそれは神になるのか世界になるのかという話でありあるいは上記の要約はそれ自体が神や世界に近づくかという話であってそれは違うような気がします。というかそもそも世界や神は理解できない凄いものであっても理解できない凄いものが世界や神になる訳でもなくそれが正しいも何もないなと結論づけます。

 色々と考えましたが、本作は想像力が、爆発する作品でした。おもしろかったです。

「プロローグ」感想:
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