作品情報
監督:キケ・マイロ
評価
☆☆☆(最高評価は☆5つ)
※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。
ネタバレ感想
本作は、ひたすら主人公の兄のダヴィッドが可哀そうな作品だった。
本作を兄側の視点から見てみるとこうなる。10年前にふらっと地元を飛び出していった弟がいきなり帰ってきた。久しぶりに会ったということで歓待した兄。しかし、その弟は娘として扱っているエヴァを家に連れ込むやら、自分の妻に馴れ馴れしく近づくやら、自分の家の庭を外から眺め話しかけるとすぐにいなくなるやらと、トラブルしか巻き起こさない。挙句の果てに、妻にキスまでしてしまう。
出ていけといったのに地元に居続けるアレックス。いつの間にか妻は弟の家に行って崖から落ちて死んでしまう。その直接的な要因となったのは、娘としてかわいがっていたエヴァが妻を突き飛ばしたことにあった。そして、なぜかそのエヴァはアレックスのところにいるし、エヴァは自分ではなくアレックスと一緒にいて楽しそうにしている。
アレックスが故郷にさえ帰ってこなければ、ダヴィッドは妻とエヴァと普通に幸せな生活を送れただろう。それを全部ぶち壊したのはアレックスであるのに、主人公補正なのか何なのかちょっといい話みたいな感じになっているのがなんとも。そして、最後の最後にエヴァが、目を閉じて見えたシーンというのが、エヴァ、ラナ、アレックスの3人という部分が切ない。このシーンにおいて、一緒に過ごしていたダヴィッドの姿が全くないというのが、ダヴィッドの悲哀を象徴的に表しているように思う。
さて、本作のストーリーに目を向けると、もうちょっと頑張って欲しかったというのが本音である。本作は、恋愛映画にSF要素を付加させたような作品であったが、恋愛映画とするならば、もうちょっと主人公に魅力を持たせてほしかったというのが正直なところだ。エヴァが主人公に対して変質者だと言うシーンを見てから、アレックスの行動を見てただの不審者にしか見えなくなってしまい、主人公に感情移入できなかった。また、このような題材であれば、SF的な方向からももうちょっとストーリーの掘り下げができたのではなかったかなと思った。
結局、本作の魅力のコアはエヴァ役のクラウディア・ベガの演技によるところが大きく、それに尽きる感じがした。もう少しダヴィッド周りのストーリーが納得のいくものであれば、本作を観た後のもやもや感はなかったのになと思った。