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映画「ファースト・マン」感想:孤独は内にあり。

作品情報

ファースト・マン (字幕版)

ファースト・マン (字幕版)

  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: Prime Video

監督:デイミアン・チャゼル

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 単なる英雄としてしか知らなかった、ニール・アームストロング。彼の功績や残した有名な言葉を聞く度に、完全無欠なヒーローとしてのニール・アームストロングの姿がどんどん大きくなっていった。そんな彼のイメージを、一人の人間まで引き戻してくれたのが、本作だった。

 実話を元にした本作品で描かれるニールは、静かで、孤独で。そこに光り輝く英雄の姿はなかった。娘の死、同僚の死...本作のニールには、常に死と孤独がちらついているように感じた。僕が成功体験としてしか知らなかったアポロ13号の冒険の裏にあった、彼の悲しみや孤独の一端をこの映画で知ることができたように思う。

 話は変わるが、本作のアポロ11号でニール達と別れ、1人で月の周回軌道を回る宇宙船に残ったマイケル・コリンズは、人類で最も孤独だった男と言われることがある。宇宙船が月の裏側にいる間、コリンズとニール達は直径約3500キロの月により隔てられていた。地球の残りの人類との距離は、その百倍以上、40万キロ弱。また、一度月の裏側へと入ってしまえば、地球と交信することはできず、他の人類と会話することもできない。この物理的な隔絶は、孤独というラベルを貼るのに申し分のないものである。

 しかしながら、本作でやはり一番印象に残ったのは、ニールの地球上で抱いていた孤独だった。本作のニールは、なかなか娘のことについて、他者に打ち明けることはほとんどなかった。また、同僚の死でストレスを感じても、誰かとそれを共有するでもなく、一人自宅の庭で月をみあげ、他者を拒絶する。常に、彼には寂しさが背後霊のように付き纏っていた。

 そして、最後のシーンも彼の孤独をよく表していたように思う。通常なら、最も親密な関係性であるはずの妻とさえも、ガラス越しにしか対面することができなかった。どんなにお互いに近づこうとしても、そこには薄いけれど確かな壁があった。また、二人は再会したにもかかわらず、歓喜する訳でもなく、どことなくぎこちない。結局、いくらニールが月から地球へと戻り、物理的な距離が縮まっても、ニールと妻ジャネットとの心の距離はゼロにはならなかったのだ。そこに、ニールが抱く孤独が映し出されていた。

 しかしながら、この孤独はニールとジャネットに特有のものではないだろう。人は、他人を100%理解できることなどない。本作の物語を振り返ってみても分かるように、人は他人と完全に分かり合うことはできないし、すれ違いはどうしても生じる。心と心の間には、少なくともガラス1枚分の距離があって、それが孤独へと繋がっていく。人類の本当の孤独とは、物理的距離のような外的要因により生まれるものではなく、人間の内側から生まれてくるものだと、本作を見て強く感じた。