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第一東京弁護士会編「これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド」レビュー

作品情報

これだけは知っておきたい!  弁護士による宇宙ビジネスガイド

これだけは知っておきたい! 弁護士による宇宙ビジネスガイド

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

レビュー

 本書は、どの読者層に向けたのか分かりづらい書籍です。

 本書の序文によれば、本書は「宇宙の専門家ではない学生や一般の方々が、宇宙ビジネスに不可欠な宇宙法のおおよその全体像を把握するための『道しるべ』となる分かりやすい入門書を目指すもの」(本書i頁)であるとされています。しかしながら、本書は宇宙法と同時に宇宙ビジネスにも焦点を当てており、その結果宇宙法についての記述が中途半端となっているようにも思えます。

本書の宇宙法の記述について

 まず、宇宙法の記述ついて検討します。本書は、ビジネスの各分野について順番に触れながら、同時に関連する宇宙法についても言及しているスタイルを取っています。そのため、国際宇宙法・国内宇宙法について体系立って解説されるのは、第8章、第9章になってからです。それまでの章においても、宇宙法の条文が引用されることはありますが、体系立った説明の前に条文が引用されるので、宇宙法の初学者が読みこなすのは難しいかもしれません。

 また、本書では法学的な単語が解説なしに登場します。例えば、国家責任の部分では、特に説明もなく、いきなり過失責任や無過失責任の概念が登場します(本書26頁)。また、国際法著作権法など、該当する法分野の基礎を知らないと、どのような説明をしているか分かりづらいところもあります。このように、本書では法学の一定の素養がある人を対象に書かれているため、非法学部で法を勉強したことのない人が読み進めるのは難しいところもあります。

 逆に、宇宙法についてある程度勉強した人にとっては、本書は1トピックに割かれる頁数が2頁しかないことからすれば、物足りないと思う部分があります。例えば、宇宙開発と知的財産権という興味深い分野についても、たった1.5頁しか記述されていません。加えて、本書はどちらかというと宇宙ビジネスについての紹介に分量が割かれています。

 さらに、本書の著者の中には参考文献をほとんど引用しない人も多く、参考文献をたどって勉強することが難しくなっています。

 以上からすれば、宇宙法を勉強したいという人にとって本書はそこまでおすすめできるものではありません。宇宙法という観点からすれば、本書よりも以下の書籍の方がおすすめですね。

宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第2版

宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第2版

本書の宇宙ビジネスの記述について

 本書は、宇宙ビジネスの把握という観点からもそこまでおすすめできるものではありません。

 本書は、将来的なビジネスにもかなりの焦点を当てているように思えます。そのため、デブリ除去や宇宙資源採掘、サブオービタル旅行、宇宙ホテル、宇宙エレベーターというような、研究開発途中のサービスについて多くの頁数が割かれています。その代わりに、日本の宇宙産業の現状が説明されていないなど、宇宙ビジネスを語る上で欠かせない内容が犠牲になっている部分があります。また、スペースデブリの問題の前提となる、衛星の軌道やデオービットについての解説がそもそもないなど、技術的な説明に欠ける部分もあります。

 本書だけで宇宙ビジネスを網羅するのは厳しいでしょうし、宇宙ビジネス単体であれば他にも色々な文献があります。宇宙ビジネスについて知りたいのであれば、本書ではなく違う書籍等を検討するのも一手でしょう。

 手っ取り早く無料で宇宙産業について把握したい人については、日本政策投資銀行こちらの資料がおすすめです。

まとめ

 本書は、宇宙法の初学者にはそれほどおすすめできない一方で、宇宙法をしっかり学んだ人にもそこまでおすすめできません。ただ、国内宇宙法に手が回っていないという人であれば、本書の購入を検討するのもありかと思います。ただ、個人的には以下の本の方がおすすめです。

宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第2版

宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第2版

 宇宙ビジネスを知る書籍という観点からすれば、本書よりも他の書籍等を探したほうが良いというのが正直なところです。宇宙ビジネス単体については、日本政策投資銀行の資料など、インターネットで公開されている情報を調べてから、本書の購入を検討しても遅くはないでしょう。

 いずれにせよ、本書が気になった方は、一度書店等で中身を確認してから購入することをおすすめします。