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三谷幸喜監督「清須会議」感想

作品情報

監督: 三谷幸喜

小説版と映画版がありますが、映画版の感想です。

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、秀吉役の大泉洋さん、柴田勝家役の役所広司さん、丹羽秀長役の小日向文世さんの演技が光った映画でしたね。

 秀吉役の大泉洋さんは、持ち前のコミカルさで映画の最初から楽しませてくれました。特殊メイクで長くなった顔や大きくなった耳を見ているだけでにやけてしまいそうな感じでした。そんな秀吉の普段のおちゃらけた感じと、シリアスな話になった時に笑顔が消えて、時に背筋が寒くなるような表情を浮かべていたのが非常に印象的でした。秀吉は、もともと百姓から成り上がる事のできた人物ですから、それだけ一癖も二癖もある人間のはずで、その力量の大きさの測れなさ、意図の読めなさが感じられる演技で、リアリティがあるなと感じました。

 柴田勝家役の役所広司さんは、直情的な柴田勝家をうまく演じていますね。見ているだけでも人柄の良さが伝わってきて、政治力や計略には長けていなくとも、非常に頼り甲斐のある家臣である様が伝わってきました。

 丹羽秀長役の小日向文世さんは、戦国武将らしい計算高さがうまく演じられていたと思います。柴田勝家のように、感情を表に出すわけではなく、利害得失を冷静に見極めている。柴田勝家と好対照なキャラクターになっていたと思います。特に、後継者である三法師を推す時の間や表情が、丹羽の揺れ動き・逡巡をうまく表していると感じました。

 それにしても、本作で描かれている秀吉は非常にうまく立ち回っていますね。もともと、重臣だった柴田勝家・丹羽秀長ががっしりとした体制を築いていた中で、どうやって逆転するんだろうと思って見ましたが、感情や理性を揺さぶる秀吉の人の心を掴むうまさが非常に現れていたと思います。これと対照的なのが柴田勝家で、人柄が良くても実利をうまく提供できなければ見限られてしまうという戦国時代の恐ろしさが感じられました。天下を取る上で大事なのは、武勇ではなく、人望や政治力である事がまざまざと伝えられていました。

 本作のどこまでが史実で、どこまでが史実にない創作なのかは分かりませんでしたが、非常にエンターテイメントとして良くできた作品だったと思います。個人的には、ちょっとだけコミカルすぎたかなと感じてしまいましたが。これはきっと、映画の尺の関係上コミカルな部分が印象に残ったのと、史実に基づくものだからこそ、もうちょっとお堅いのを自分が求めていた、ということに尽きるのでしょうね。