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映画「スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」感想

作品情報

gaga.ne.jp

監督:オリビエ・ナカシュ

なお、本作のモデルとなった団体のホームページはこちら(フランス語)

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

※おそらく、私のこの記事を読むよりも、日本自閉症学会のホームページ自閉症について学ぶ方がよっぽど有意義な時間を過ごせると思うし、本作の視聴者として、より正しい行いであるように思う。今このタイミングでそちらのページを読み進めてもらって構わないし、本記事の末尾にも再度リンクを貼るので、ぜひ一度同ホームページで自閉症について学んでいただきたいと思う。以下本文。

本作は、事実をベースにした作品だからこその力強さがあった一方、他方で映画のストーリーとして見た場合には、終盤が尻すぼみであると感じた。

本作の問題提起は、非常にまっすぐで、だからこそ非常に衝撃を受けた。子供の頃の自閉症だったクラスメートを思い出しながら本作を視聴して、彼は決して重度の自閉症ではなかったことに気づく。言葉で分かり合うことができない。だからこそ暴力に走ってしまう。それに対処することの困難さ。対処するのが困難だからこそ、誰からも見捨てられ、部屋に閉じ込められ、症状が悪化してしまう。今、まさにこの瞬間、全世界の自閉症患者たちのために働いている人々に頭が下がる思いがした。

本作が良かった点の1つは、自閉症の子供だけではなく、大人(ジョゼフ)も同時に描いていたことである。一般に、人々は子供に対して積極的に同情をするものの、一度大人になってしまえば興味を失いがちであるように思う。大人になった、その事実だけで何かが劇的に変わることはないにもかかわらず、ただ年齢を重ねたというだけで無意識に視界から外してしまう。本作を見て、そのような振る舞いをしてしまう自分が戒められた様な気がした。

新たな視座を得ることができたという意味で、本作は非常に有意義だったと思うものの、最後はどうしても尻すぼみであるとの印象を拭えなかった。ジョゼフが最後に橋を渡り切ることができた、ヘッドギアの少年がヘッドギアを外すところまで回復した。それら自体のエピソードは美しく、物語の終わりとして申し分のないものだった。しかし、そこに至るまでの過程が省略されており、非常に唐突に感じた。特に、ヘッドギアの少年はレンジを窓からぶん投げ、高速道路を一人彷徨うところまで精神状態が悪化していたにもかかわらず、最後のシーンでは突然病状が回復している。とってつけたかのような終盤のシーンに、もう少し構成を考えて欲しかったなと思った作品だった。

本作を読んで、本作のエンディングはあくまで始まりに過ぎないと感じた。映画が終ろうとも、自閉症の方達の生活は何も変わらずに進んでいく。その様な人たちに何ができるかを考えるところまでが、本作の視聴体験である様に感じた。

ということで、今度は日本の自閉症の方達の現状について書こう。日本自閉症学会によれば、自閉症の人数は20~40人に1人存在する可能性が指摘されているそうだ*1。これは、僕が想定していた数字よりも、ずっと多い数字である。そして、自閉症の特徴とは、「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと」*2だそうだ。本作で言えば、洗濯機に強い執着心を抱くジョセフを思い浮かべれば、イメージが湧きやすいと思う。

そして、自閉症患者の方については、いじめ等により二次障害が起こることがあり、それを防止することや子どもの安心と安全を保障することが重要だそうだ*3。そして、実際に様々な施設において、様々な形の支援が行われている。

自閉症の専門家でも、自閉症の方の支援を行っている訳でもない筆者が、長々と自閉症について語るのは不適切であると考えられることから、ここで筆を置こうと思う。その代わりに、以下におすすめのリンクを掲載するので、本作を思い返しながら、ぜひ一度目を通すことをおすすめする。

・本田秀夫「自閉症スペクトラムの理解と支援」
自閉症についての基本的なことが説明されている記事であり、最初に読むと良いだろう。

・山岡 修「発達障害のある人の就労の現状と課題」(2008年)
少し古いが、厚生労働省の研究会で行われた発表の資料である。日本におけるジョセフが、どのような苦労をしているのかの一端がわかる。

・横浜 自閉症支援 社会福祉法人 横浜やまびこの里 事業案内
実際に自閉症の方々の支援を行っている団体の1つ。事業報告を読むと、実際にどの様な経営状況なのか等が分かる。