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辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」ーアンと昔の僕について

作品情報

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 あなたは、自分が自殺する様を思い描いた事があるだろうか。

 僕はある。この高い所から飛び降りたらどうなるのだろうかとか、台所の鋭い刺身包丁を自分の胸に突き立てたらどうなるのかとか。小中学生の頃に、ふと考えた事がある。

 別にちゃんとした死にたい理由も覚悟もあった訳ではないけれど、自分が消えた世界はどうなるのかというのが気になった。自分が死んだらどうなるのだろう。死んで全てが終わりになるなら、ここから飛び降りても/飛び降りなくても一緒ではないか。なら今ここで飛び降りない理由は何だ。思考がぐるぐると回った。

 でも、ここで自殺したとしても、自分の死は世界に大したインパクトを与えられる訳でもない。それは己の命の使い方としてもったいないから生きようと、斜に構えて自殺について考えるのを辞めた。本人としては真面目に考えているつもりだった。

 ただ、自分は頭ではそう考えていても、心はずっと正直だった。実際に落ちそうな高い所の淵に行ったりして自分の命に危険がありそうな状況になると、心の底から怖くなり、何も考えられなくなるのだ。

 何のことはない。中二病だ。毎回よく分からない理屈をつけて自殺について考えるのを辞めていたけれど、結局当時の自分は別に死にたくもなかったし、死ぬ事が怖かったし、生きたかった。仮に誰かに殺されそうになったとしても、必死で逃れようともがいた事だろう。

 そんな過去の自分に対する、今の僕の、ある種の恥ずかしさを伴った感情と、この小説を読んだ時の感情は重なる。かつての僕がいた地点のずっと先に、アンがいたような気がするのだ。アンは徳川に殺されるという方法を取っているものの、自分がリードしている以上、ある種の自殺をしようとしていたとも言える。そして、アンの動機は、僕と同じような薄っぺらい自殺の動機だけれど、自殺について考える真剣さは、アンの方が遥かに上だ。

 アンの自殺の動機は、親への当てつけという、中学二年生にありそうなもの。親に怒られた時に、一瞬でも自分が自殺したらどうなるのだろうと考えた自分と非常に重なった。それが徐々に周りを見返す事や己の意地という物にすり替わっていく様も、非常にリアリテイのあるものだったと思う。アンにとって、結局の所、死にたい理由は薄っぺらいものでしかなかった。だからこそ、僕は過去の自分をアンに重ね合わせたのだ。

 だからこそ、本書の結末がアンが自殺するというものでなくて本当に良かった。誰も不幸にならない、幸せな終わり方で良かった。

 そして、僕の過去の自分に対する感情は、現在のアンが抱く過去のアンに対する感情にも重なっているようにも思える。ある種の恥の記憶、そして懐かしさ。昔の自分を暖かく見守る気持ち。

 今のアンなら、今の僕のように、過去の僕を受け止めてくれる気がした。