本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

「パラサイト 半地下の家族」考察及び感想:世の中、思いやりと金。

監督:ポン・ジュノ

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ考察・感想

 本作は、途中まで多くのコメディが含まれていて観客を飽きさせないだけでなく、作品を通してのメッセージも分かりやすく提示されていて面白いなと思いました。本稿では、後者の点にフォーカスして考察・感想を書いていきます。

 まず、本作の基本構造として、金持ちは地上、極貧者は地下にいます。パク家の豪邸は、富の象徴です。主人公の家族は半地下に住む=金持ちと極貧者の間にいる貧困者です。主人公のギウは、富をもたらす山水景石を手に入れたあと、ひょんなことから金持ちであるパク家の側で働くようになり、次々と家族をパク家で働かせます。その過程で、同じく金持ちの元で働く存在=半地下の存在である家政婦ムングァンを蹴落とし職を手に入れます。そして、主人公一家はパク家にパラサイトしながら、徐々に金を稼いでいきます。この過程は何とも痛快でしたね。いろいろな技を繰り出して職を得る様は興味深かったです。

 最終的に、主人公一家は、パク家がキャンプに行っている間にパク家の豪邸=富を一時的にのっとります。しかし、自らが職を奪った家政婦ムングァンに恨まれ、その夫であり地下の住人=極貧者であるグンセと共に窮地に立たされ、パク家の豪邸=富を完全に乗っ取ることはできませんでした。半地下の住人と地下の住人が協力して金持ちを家から追い出すのではなく、彼らの争いによりパク家の豪邸=富を完全に乗っ取ることができなかったあたりが、皮肉が効いていますね。他にも、地下の住人=極貧者であるグンセが、自ら地下から出ようともしないというのが、とてもシニカルでした。

 パク家の住人が帰ってきた段階で、主人公の家族はムングァンやグンセを地下=貧困に蹴落とします。決して彼らを助けるようなことはしません。そして、パク家の人々=金持ちは、嵐という災いでさえも楽しみながら過ごす一方で、半地下及び地下の人々は嵐により壊滅的な被害を受けます。ここは、金持ちとそれ以外との格差を如実に表している部分だと感じました。

 主人公一家がムングァンを地下へと蹴り落とした結果、ムングァンは酷い怪我を負います。地下の人々がそのような困難にあっても、パク家の人々は地下の人々に気付きません。親の世代は、グンセが必死の思いで出した助けてというサイン(光によるモールス信号)に気付きませんし、若い世代であるダソンも助けてというサインに気づいてもなんら行動に移しません。そもそも、地下の住人=極貧者であるグンセを幽霊=存在しないと勘違いするくらいです。

これに対し、主人公のギウは、地下の住人を救おうとしますが、時すでに遅し。ムングァンは死にます。家政婦ムングァンの死により激怒したグンセにより主人公一家は襲われ、ギジョンは殺され、ギウも瀕死になります。また、主人公一家とグンセの争いを傍観していたパクは、半地下の住人であるギテクの無計画な行動により死亡します。この部分を見て、貧困者や極貧者の争いを傍観し助けようともしない金持ちは、殺されることだってあるんだぞ、人ごとじゃないんだぞというある種の脅迫、強いエネルギーを感じました。

 貧困者が金持ちを殺したあとで、パク家の豪邸=富を手に入れたのは外国人だというのも皮肉ですね。貧困者が金持ちを恨んで殺したとして、結局富をかすめ取るのは外国人だと、警鐘を鳴らすかのようなシーンでした。

 そして、半地下の住人であるギテクは、自らの無計画な行動により地下へとたどり着くことになりました。

 ここで終わっていれば、本作はただの絶望的な映画でした。しかし、最後に希望が提示されます。金持ちであるダヘは、愛するギウを救えました。また、半地下の住人であるギウが、家族の絆を大事にし、金を稼ぐことで地上の住人になって地下の住人であるギテクを救うという計画が提示されました。ただし、ギウについて言えば、あくまで極貧者が救われる可能性を示したにすぎず、実際に救われてはいません。世の中そんなに甘くはないってことを伝えているかのようですね。

 本作は、金持ち、貧困者、極貧者に対して様々なメッセージを送っているように思います。金持ちに対しては、困っている貧困者や極貧者に気づかず、あるいは傍観していればいずれ災いが起こるだろうという警鐘と、貧困者を救うことはできるのだという光明。貧困者に対しては、金持ちにパラサイトし極貧者と争うのではなく、計画的に自ら稼ぎ富を手に入れることで極貧者を助けられるのだという希望と、無計画に行動すれば極貧者に転落するという教訓。極貧者に対しては、貧困者と争うのではなく、自ら金を稼ぐ矜恃を持てとの叱咤激励。

 加えて、本作は韓国経済そのものの比喩ともなっており、貧困者や極貧者が増えている中で、韓国人同士が争ってしまえば外国人に富を奪われてしまうというメッセージを発しているように思いました。

 結局思いやりと共にお金が大事なんだなあ。そう思わせてくれる作品でした。明日からも仕事頑張ります。