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古屋晋一「ピアニストの脳を科学する」レビュー

作品情報

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

レビュー

 ピアニストと、普通の人の違いは何でしょうか。ピアニストのあの素晴らしい演奏の背後には、一体何があるのでしょうか。それを解き明かしているのが、本書「ピアニストの脳を科学する」です。

 作者の古屋さんは、様々な角度からピアニストと普通の人の違いを明らかにしていきます。

 最初に挙げられているのが、脳。なんと、ピアニストと普通の人は脳からして違うのです。その一例として、古屋さんはピアノを速く弾くときの脳の働きについて、チューリッヒ大学の教授の研究結果を元に、以下の様に述べています。

同じ速さで同じ指の動きをしているにもかかわらず、活動している神経細胞の数は、ピアニストのほうが、音楽家ではない人よりも少ないということがわかったのです。(中略)非常に速く複雑な指の動きでも、ピアニストの脳にはまだまだ余力が残っていると言えます。その余力のおかげで、ピアニストはさらに速く複雑な動きで、華麗な音楽を奏でられるのです。(7-8頁)

 このような研究の数々から、古屋さんは、ピアニストと普通の人の脳の違いを分かりやすく描き出していきます。ミスが起きた時の脳の働きの違いなど、興味深いものばかりです。また、ピアニストと普通の人の違いとして、すぐに思いつくような、ピアニストの聴覚や楽譜の記憶についても、脳の話と絡めて解説されます。今までピアニストと一般人が脳のレベルで異なっていると知らなかった自分にとっては、衝撃的でした。

 また、本書は「ピアニストの脳を科学する」というタイトルですが、脳の話だけではありません。例えば、ピアニストが疲れずにピアノを弾ける技術の話であるとか、ピアニストの指や身体の動かしかたであるとかが、科学的に解説されています。これらの中には、実際にピアノを弾く能力を向上させるのに役立ちそうなものもあります。

 このような内容をもつ本書のように、ピアニストを科学的に分析している書籍はなかなか珍しいのではないでしょうか。

 本書は、ピアノを日常的に弾いている方だけではなく、かつて弾いていた方にとっても、興味深い書籍です。今まで、感覚で捉えていたピアノを弾くという行為が、この様に科学的に解説される様は、非常に知的好奇心をくすぐられます。また、ピアノの曲を聴くのが好きな人にとっても、普段聞いているピアニストの凄さが、科学的に解説されてより一層分かるのでお勧めです。ぜひ一度手にとってみてください。

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム