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「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」感想:蛇足。

作品情報

監督:J・J・エイブラムス

評価

☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作を見てまず思ったことは、続三部作はただの蛇足だったのではないかというものだった。エピソード4の焼き直しにしか思えないエピソード7、ルーク・スカイウォーカーなど過去作のキャラの扱いやストーリーが酷いエピソード8。そして、この2作品によって異様に下がったハードルを、見事にくぐった本作。もはや、続三部作は作られなければ良かったのにと思うようなひどさだった。

 まず、パルパティーンがあっさり復活したことに驚いた。パルパティーンが復活すること自体は良いとしても、映画の序盤であっさり復活されると、今までのストーリーで語られたパルパティーンとの対決の意味はいったいなんだったのだと思わざるを得なかった。また、これから何度でもパルパティーンが復活することを示唆するようでもあり、気怠く感じた。加えて言えば、せっかくカイロ・レンがスノークを殺して悪の総帥になれたのに、またパルパティーンに対し同じことを繰り返すのではないかと予想がついた。

 復活したパルパティーンによりレイの殺害を命じられるカイロ・レン。それにより、逃げるレイたちとそれを追うレンという構図が成立したものの、追う側のレンがレイをダークサイドに取り込もうとしており、レイを殺す気がないのが丸わかりだったため、この逃避行は特にスリルがなかった。実際、チューバッカが乗っているらしき宇宙船をレイが破壊した際も、あっさりと見逃している。

 その後、ジョークとしてはさして笑えないし、特に物語上の必要性を感じなかったC-3POの記憶消去という展開を経て、レンの船に乗り込むレイたち。

 船内において、処刑直前だというのに緊張感のないフィンたちが、レンが嫌いだからという子供っぽい理由で突如裏切ったスパイに助けられるというよく分からない展開に、映画の途中ながら気持ちがどんどん冷めていった。これは続三部作に共通することだが、合理的理由や伏線もなく「衝撃的」な展開を粗造することは本当にやめて欲しかった。とりあえず、視聴者の期待を裏切れればなんでも良いと監督が考えているように感じた。

 スリルのない逃避行は、レイが1人で崩壊したデス・スターに乗り込むシーンでも続いた。とりあえずデス・スターを出しておけばファンが喜ぶと考えているかのような演出に頭が痛くなりつつも見ていると、レイとレンの戦いが突如始まった。怒りに突き動かされ、大振りを繰り返すレイと、あえて大振りで対応しレイを殺すそぶりが全くないレンとの戦いは、正直退屈だった。また、戦いの決着の理由が、戦いそのものではなくレイアの呼びかけによるというのは、拍子抜けだった。

 ただ、そのような戦いの決着の仕方も、何故かレイがレンを回復させたという謎の展開に比べればマシだった。正直、あれだけ怒りと殺意を抱えていたレイが、とどめを刺したレンを復活させた理由はよく分からなかった。レイの怒りはどこに飛んでいってしまったのだろうか。百歩譲って、一度レイがレンにとどめを刺したことでレイの怒りがなくなったと考えても、数十秒前まで殺し合いをしていた相手を復活させる合理的理由はないだろう。自分が殺されると思わなかったのだろうか。

 そして、パルパティーンの下に乗り込むレイと、それを追うレン。パルパティーンの部下との戦いはそれなりに見応えがあったが、肝心のパルパティーンとの戦いは超展開だった。レンとレイからパワーを吸収し力を取り戻したパルパティーンは、レンとレイを圧倒するものの、何故か2人を殺さない。悪の大将としては明らかに甘すぎる振る舞いである。また、パルパティーンを倒した方法も、よく分からなかった。ライトセーバーをクロスさせると、何が変わるのだろうか。なぜレイは、劇中でも最強クラスのパルパティーンをあっさりと葬れる程、突然強くなれたのだろうか。疑問は尽きない。

 パルパティーンとの戦いと並行して行われたスター・デストロイヤーとの最終決戦。星をも破壊する艦隊が、大砲を破壊されるだけであっさりと沈んでいく様は、非常にシュールだった。恐ろしい艦隊であるという描写があったのに脆弱すぎるだろうとか、ラスト・オーダーはデス・スターの破壊から何も学んでいないなとか、攻撃の要になる銃砲にはシールドぐらいまともに貼っておけよという突っ込みは、もはや野暮と言えるくらい、適当な展開が続いたなと感じた。

 戦いの後。レンの死際にキスをするレンとレイ。せっかくフィンがレイに対し伝えたいことがあるとフラグを立てていたにも関わらず、その伏線を全く利用しない終わり方。フィンが可愛そうだった。こういう終わりにするならば、無駄にフィンとレイとの恋愛を示唆するようなシーンを入れなければ良かったのではないかと感じた。

 また、文字通り力を尽くして戦い、動くこともできなくなったレイではなく、這いずりながらも動き回れたレンが死ぬという展開も、不合理であるように感じた。

 そして、最後の最後でスカイウォーカーの夜明けというタイトル回収。あ、そんな感じで済ますんですねというあっさりとした終わり方だった。おそらく、人を決めるのは血筋ではなく選択なのだというテーマを伝えるために、レイはパルパティーンという本来の名前ではなく、スカイウォーカーという名字を名乗るという終わり方になったのだろう。しかし、レイがスカイウォーカーを名乗るまでに、もうちょっと積み重ねが欲しかったというのは望みすぎだろうか。

 結局のところ、エピソード7-9は、怒りに満ちたレイがダークサイドに落ち、スカイウォーカーの家系に連なるレンがライトサイドに戻るかのような伏線を貼り続けたにも関わらず、レイが特に理由もなくライトサイドに止まることができたために、まとまりのない作品になっているように感じた。また、ルークなど過去作のキャラクターを意味もなく侮蔑するかのような展開の数々は、スター・ウォーズを楽しみにしていた私の心をすっかり冷めさせた。ディズニーが制作会社である限り、私がスター・ウォーズの続編に期待することは二度とないだろう。

 続三部作は蛇足だった。本作は、その思いを確固たるものにしてくれた作品だった。