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劉慈欣「三体」感想:四体。

作品情報

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー

なお、Amazonによれば続編は6月発売の模様です。

三体2 黒暗森林 上

三体2 黒暗森林 上

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 単行本

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)


※以下は本作のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

「三体」の感想

 本作は、昨年随分と話題になっていただけあって、かなり面白いSFだった。序盤から繰り出される文化大革命。実際の人間の科学を否定する営みから、世界の科学を否定するフィクションに繋げていく手法は、鮮やかだった。確固たる事実よりも、信じたいものを信じることが増えてきたこのフェイクニュースの時代に、多大な示唆を与えてくれる作品だと感じた。

「これまでも、これからも物理学は存在しない」

 本書のこの一文は、生まれた時から科学に囲まれていた私の世界観を揺らがすに足る一撃だった。物語の中であれ現実であれ、科学者を殺した人は数あれど、科学そのものを殺そうとした作家は今までいなかったのではないか。劉慈欣さんの想像力に脱帽するしかない。科学という営みを行う科学者を殺しても、科学は続いていく。しかし、科学という思想、精神を破壊してしまえば。SFらしい、なんともスケールの大きい考え方だろうか!今まで読んだどんなホラー小説よりも、ずっと戦慄するような内容だった。

 余談にはなるが、現実の科学者にも劉慈欣さんのようなぶっ飛んだ考え方をする人がいる。カルロ・ロヴェッリという物理学者は、著書の中で、時間は存在しないと言い切っている。これはこれで、センスオブワンダーを感じさせる本なので、機会があれば是非読んでいただきたい。

時間は存在しない

時間は存在しない

 さて、本書のスケールの大きさは、色々なところで現れているように思った。例えば、人間コンピューターでのエピソード。論理回路でコンピュータができていることは知ってはいたものの、それを人間で代用しようとする発想には度肝を抜かれた。しかも、この人間(異星人)コンピューター、物語上の必然性があって出てきた訳でもなさそうだ。単に異星人は自分たちでコンピューターを開発しましたとすれば済むところを、ここまで話として展開する。作者の劉慈欣は、よっぽど想像力に溢れた人なのだろうと思った。

 それにしても、続きが気になってしょうがない。本書はまだ、序盤が終わったに過ぎないのだから。何しろ、三体星人が地球に送れたものは、まだ電磁波と陽子だけでしかない。果たして、この世界の行末はどうなるのだろうか。人は科学研究を無事に押し進めて三体星人に対抗することができるのか。あるいは「虫けら」として戦いを挑むのか。6月が待ち遠しい。

「三体」と写真

 本書を読んでいて唸らされたのが、写真に関する部分。例えば、汪淼が写真を撮る時のように風景をみてしまうという描写に共感せずにいられなかった。また、都市の中の荒野を探して撮るというコンセプトが評価されてアマチュア写真家の中で有名になったという記述も、確かにそのようなコンセプトは面白いなと思った。本作において、汪淼という人物が生き生きとして見えたのも、このように写真好きとしてのリアルな描写があったからかもしれない。

「三体」

 本作を読みながら、一番気になっていたのがタイトルの由来だった。三体、三体。頭の中で唱えてみても、何にも結びつかなかった。話の途中で宗教が出てくるあたりで、これはキリスト教の三位一体をもじった何かなのでは?と閃いたものの、結局全く関係せず。お手上げの状態だった。

 しかし、読み進めていき、本書の説明を読んで三体問題か!と驚かされた。無機質なあの理屈からこの物語を生み出す。本書の言葉を借りるならば、これこそまさに劉慈欣さんの想像力による跳躍だなと思った。

 今日の午後のうちに本書を読み切ってしまい、三体の意味も分かって穏やかな満足感と共に本記事を書き始めたPM10時。ふとあることに気づく。重箱の隅を突くようでかっこ悪いとは分かっている。このまま記事を終えた方がいいことも分かっている。しかし、頭の中のこの一文を書き出さずにはいられない。

 3つの太陽と1つの惑星、これって四体問題では?

三体2 黒暗森林 上

三体2 黒暗森林 上

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 単行本

三体2 黒暗森林 下

三体2 黒暗森林 下

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 単行本