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松岡圭祐「万能鑑定士の事件簿」感想:突拍子のないミステリー?

作品情報

評価

☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、正直あまり好きではない作品でした。博識な美女が謎を解き明かしていくというのは良いのですが、肝心な推理の内容がいまいちでした。

 一例を挙げましょう。凛田は、印刷されたイオナ・フーズのウェブサイトの写真を見て、このように断言します。

「それはコクヨの蛍光マーカーペン、ラインボルト。(中略)黄は尖ってる。そのペンは黄よね」(中略)「画像編集ソフトで特定の色を別の色に変えたのよ。具体的にはフォトショップで『色合・彩度』ダイアログから『編集』で色を指定・写真の中の黄いろを緑いろに変えたの」(212-213頁)

 特定の色だけを変えることは、フォトショップ以外の普通の画像編集ソフトでも十分可能です。そして、編集した画像を紙に印刷した場合、その印刷された画像からどんな画像編集ソフトを使ったか知るのは不可能に近いです。

 それにも関わらず、凛田はこれがフォトショップによって加工されたものだと断言します。もはや、万能鑑定士というより、超能力者の所業ではないかと、この部分を読んでいて思わざるを得ませんでした。

 また、イオナ・フーズの料理教室が、上の階の窃盗を誤魔化すために行われたというのも不可解でした。そもそも、様々な音を的確にマスキングできるような音を、人間が料理しながらできるかというと疑問です。それに、料理教室の音を聞いただけで、小型のモーター音など、マスキングする対象となる音を正確に指摘できる凛田は、もはや人を越えた存在としか思えません。

 というか、そもそも侵入する音を誤魔化したいなら、不確かなマスキング効果に頼るよりも、爆音で音楽を鳴らした方がよっぽどお手軽でしょうし、効果的です。もっと言えば、下の階で料理教室を開くなどというコストを割くぐらいなら、深夜にこっそりと侵入した方がよっぽど楽でしょうし、それで事足ります。まあ、この部分は推理そのものとは関係ありませんが。

 こういうようなぶっ飛んだ推理が本作では散見されたため、本作は突拍子のないミステリーだなあと思いました。そもそも、本作はミステリーというよりも、超能力者によるサスペンス小説といった方が良いのかもしれません。