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映画「クラウド アトラス」感想:物語の掛け算ではなく足し算の作品

作品情報

なお、本作は同名の小説の映画化です。

クラウド・アトラス 下

クラウド・アトラス 下

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、6つのバラバラだったはずの物語が有機的に結合して想像もできない結末を迎えるのかと楽しみに見ていたら、結局大して結びつくこともなく終わったので拍子抜けしました。また、それぞれの物語自体もそこまで面白い訳でもなかったです。普通の作品が掛け算されて優れた作品になるかと思ったら、並みの作品が足し算されて結果的に並みの映画になったような作品だと感じました。

 それぞれの物語の繋ぎがうまかったり、同じ俳優が複数のキャストを演じているのが凄いのは認めますが、その技巧的な部分だけでは、そこまで感銘を受けませんでした。

 本作のテーマは、「命は自分のものではない。子宮から墓まで、人は他者と繋がる。過去も現在も。すべての罪が、あらゆる善意が未来を作る」「あらゆる垣根は慣習に過ぎず、超えられるのを待っている。それを越えよう思えれば、どんな慣習だって越えられる。(All boundaries are conventions, waiting to be transcended. One may transcend any convention if only one can first conceive of doing so)」というものであると感じました。これらのテーマが、異なる時代で繰り返されているような気がしますね。本作のテーマ曲であるクラウドアトラス六重奏のように。

 ただ、それらのテーマを描きたいのであれば、6つの短編を映像化するよりも、もっと良い方法があったのではないかと思わずにはいられません。

1849年:航海と奴隷解放

 奴隷契約を終えた弁護士ユーイングと脱走奴隷オトゥアの物語。人と人との繋がりというテーマや、白人と奴隷の垣根を越えた友情が描かれていましたね。内容的にはそこまで盛り上がるところもない短編でしたが。

 ただ、ユーイングとその妻の姿が、2144年のチャンとソンミの姿と繋がって、輪廻転生しているなと少し感動しました。

1931年:クラウドアトラス6重奏の作曲

 フロビシャーと作曲家エアズとの繋がり。フロビシャーの犯した殺人未遂という罪。それが死という未来を形作ります。また、同性愛を禁ずるという慣習も、愛によって乗り越えられていますね。

 内容的にはエアズが憎たらしいなと思う部分があり、なぜフロビシャーが自殺という選択をしたのかよく分からない部分もあり、若干消化不良でした。

 フロビシャーがユーイングの手記を読んでいたという点で、過去と若干の繋がりがあります。また、エアズがソンミのいる飲食店の夢を見るという点でも繋がっていますね。ただ、これらの繋がりは正直薄く、あってもなくても一緒くらいの影響力しかないなと思いました。

1973年:ジャーナリストと石油メジャーの闘い

 ジャーナリストのルイサ・レイは、父の仲間たちという生まれる前の(子宮の中の?)他者との繋がりや、現在の繋がりを用いて石油メジャーたちとの闘いを乗り切ります。また、ナードっぽい研究者と共同戦線を張るなど、社会的立場の垣根を越えた協力をしていますよね。

 多少のアクションはあったものの、やっていることと言えば人に会って資料を集めて戦ってという感じで、掘り下げが薄いかなという感じがしましたね。このような物足りなさは、正直全編を通じて感じられる所ですが。

 レイは、フロビシャーの手紙を読み、フロビシャー作曲のクラウドアトラス6重奏を聞いたりしますが、これらの要素がなかったとしても本短編は成立している感じはありますね。

2012年:編集者の逃避行

 老人ホームでの人の繋がりや元恋人との垣根を越えて最後に一緒になるシーンが描かれていましたね。ただ、後者についてはもうちょっと掘り下げろと思いました。気がついたら元カノと一緒になってただけですしね。本短編は、ユーモラスでそこそこ面白かったですが、物語のテーマをそこまで伝えるものではないような気がしました。

 編集者カヴェンディッシュは新人作家の原稿、『ルイサ・レイ事件』がありました。そういう意味では、多少1973年の物語と繋がりがありますが、オブラートみたいに薄い繋がりだなと感じました。

2144年:クローン少女と革命

 チャンとソンミの繋がりが革命という未来へ繋がっています。また、純血種とクローン人間という垣根も、二人の愛で容易く乗り越えられていますね。

 内容的には、SF的なギミックが盛りだくさんなディストピアが描かれていて見ていて楽しかったです。ただ、クローン少女の主張がなぜ未来においてここまで信仰の対象になったかという点については、少し説明不足かなという気がしましたね。

 途中、ソンミがカヴェンディッシュの逃避行を見ているシーンがありました。映画化されておそらく100年以上たっても埋もれないぐらいの映画だったみたいですね。正直、2012年の物語を見ている限り、そこまで面白いと感じませんでしたが。

2321年:文明崩壊後の地球

 高度な技術を持つメロニムとザックリーが紡ぎ上げていく縁。文明人と非文明人との間の垣根を越えて、二人は愛を育みます。

 こちらも、文明崩壊後の地球が描かれいてワクワクしましたね。ただ、短さもあって小粒の短編だなと思わざるを得ませんでした。

 島では、ソンミを信仰する宗教がありましたね。ただ、なぜソンミがここまで信仰されるようになったかについては、謎です。

まとめ

 それぞれの短編で、「命は自分のものではない。子宮から墓まで、人は他者と繋がる。過去も現在も。すべての罪が、あらゆる善意が未来を作る」「あらゆる垣根は慣習に過ぎず、超えられるのを待っている。それを越えよう思えれば、どんな慣習だって越えられる。」というテーマが繰り返し繰り返し描かれているのは分かりました。ただ、それぞれの短編の繋がりが薄く、またそれぞれの内容も薄かったことから、3時間弱という上映時間のわりに拍子抜けしてしまいました。

 個人的には、一度見れば良いかなという作品でしたね。