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北野武「ソナチネ」感想:波のような作品

作品情報

ソナチネ [Blu-ray]

ソナチネ [Blu-ray]

監督:北野武

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、波のような作品であると感じた。波は絶えず生成され、盛り上がり、そして一瞬で消える。本作においても、村川など様々な登場人物がどんどん登場してくる。突如襲撃されて数を減らしつつも一部は平和で幸せな時間を過ごす。相撲を取ったり、花火で戦ったり。彼らは幸福の絶頂にあった。しかし、彼らの終わりはあっけない。突然現れた刺客に殺される者、エレベータで射殺される者、自殺する者。消滅という名の虚無に包まれるような終わり方は、なぜか僕の心を捉えて離さなかった。

 本作は、偶然かもしれないが、波のような上下運動を意識したような演出がいくつかあったように思う。例えば、海沿いの家に向かうため/家から他所へと向かうため、車で道路を登ったり降りたりして進むシーン。あるいは、メロディーが高くなり、また低くなることを繰り返すテーマ曲。暗いヤクザの生活から、隠れ家で子供のような幸せを取り戻し、突如襲撃されて絶望のどん底に落ちるストーリー。また、本作に海の近くのシーンが多かったのも、波を意識しているのではないかと感じた。

 波は、人生は、あるいは本作は、時に盛り上がり、盛り下がり、そしてふっと消える。波の動きに、人生の栄枯盛衰に意味はあるのかと、この映画を見て考える。どうせ儚く消えてしまうなら、それまでの過程にどんな意味があるというのか。

 あるいは、ラストシーンの村川を見て考える。無表情の仮面の下で、村川は何を思い死を選んだのか。村川の何らかの必然性を感じさせる選択=自殺。理屈は分からないのに、なぜこのラストシーンに納得感を感じたのか。

 思うに、本作は、波のような生成と消滅の狭間を描いたものであり、そこに何らかの意味を持たせる作品だからこそ、自殺というラストシーンに納得感を感じさせたのだと思う。映画が進むにつれ様々な人物が登場していき、最終的にその大部分が消え、主人公ですら自殺した。しかしながら、その過程は印象深く、心に刻み込まれ、本作を非常に有意義なものとする。本作と人生をパラレルに解する自分にとって、消滅することが決まっている人々の栄枯盛衰にも意味があるのだと、本作は語りかけているように感じた。本作は波のような作品であると感じるが故に。