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円城塔「チュートリアル」感想ーそして本編へ

作品情報

チュートリアル (Kindle Single)

チュートリアル (Kindle Single)

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、なかなか捉えどころのない物語でしたね。本書がタイムトラベルもののよくあるストーリーなら、「あなたは、過去に戻りたいと願った事があるだろうか」と文章を始めて、「人生はやり直せないからこそ美しい」みたいな結論をしたり顔で書くところなんですが、本作はそういう訳にも行きません。

 とりあえず、よくわからないので本書の内容をまとめてみましょう。この話の主人公=彼は、別の話の主人公であるところの彼女と出会う。彼女は突然消え、彼は違う登場人物に乗り移りながら彼女を探す。そして、最終的にこの話の主人公は、一人の嫗となり、長年連れ添っている彼と彼女を発見する。様々な登場人物のデータをロードした主人公は、もはやかつての彼とは異なった存在になっており、彼のデータをロードして彼女と二人で暮らすという当初の目的を達成しようとはしなくなったそして、主人公は、ひとつのチュートリアルが終わったのだと思う。そして、セーブポイントの輝きは、昔よりもやや鈍くなり、風景に溶け込みはじめているように思える。

 話としては以上のような形でしたね。変転を続けた主人公にとっては、過去に戻る事はすでに異なった自分の中に入る事であり、セーブポイントは主人公にとって魅力を失いつつあるという事が示唆されているような終わりだと感じました。ある思いを抱いて変化を続ける自己が過去に戻ろうとしたところで、仕様がない事なのだと。過去に戻りたいという思いを断ち切れた時、チュートリアルは終わり、本編が始まるのだと。これからは、今までとは比較にならない広い世界が広がっているのだと。そんなメッセージを抱えた物語であるような気がしました。

 人に後悔は数あれど、様々な経験を積みながら、過去の自分を冷静に俯瞰できるようになって、積極的な決断として過去に戻りたいという気持ちを捨てられるようになりたいものだなと感じました。

※なお、Kindleでは円城塔さんの「リスを実装する」と言う作品も配信されています。円城塔さんのkindleの作品の中で一番好きな作品なのでおすすめです。

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