ツアー情報
開催日:2019/12/26
場所:すみだトリニティーホール
セットリスト:
- Kaleidoscope
- Yellow Wurlitzer Blues
- Whiteout
- Mr. C. C.
- Blackbird
- Spectrum
- Once in a Blue Moon
- Green Tea Farm
- Rhapsody in Various Shades of Blue
- Sepia Effect
感想
心を奪われる。そんな言葉がぴったりの夜でした。何度も聞いた曲の数々。それが全て目の前で再構築され、もっと素敵になってやってきました。
休憩前
最初のKaleidoscope。初めからその音の多彩さに、世界の広さに圧倒されました。音源からでは決して聞くことのできない生の迫力。この1曲だけでも来た甲斐があったなと、聴きながら思っていました。
続いてYellow Wulitzer Blues。本曲の即興は、凄くユーモラスで素敵でしたね。同じ単音の素早い連打で会場から歓声や拍手が起きると、ひろみさんがそれを受けて1音ずつ音を上げながら連打を続けていく様が、茶目っ気を感じられて心が暖かくなりました。
ここで上原ひろみさんによるMCが始まりました。調律についてのお話が興味深かったです。曰く、今回のジャパンツアーはSpectumのアルバム録音の調律を行った米澤裕而さんが調律を担当していて、それが日本ツアーだけの特典なのだと。米澤さんの調律のピアノを弾くと、上原ひろみさんは嬉しくなってしまうらしく、そういう一流のプロフェッショナル同士のハイレベルな関係性って良いなあと思いました。
雪の中で作曲されたというWhiteout。ただただ、綺麗でした。初めてSpectrumのアルバムを聞いた時から好きで、生の演奏で聴けるのを楽しみにしていたこの曲。実際の演奏は、繊細で、可憐で、美しく。高音部で一オクターブ離れた音の連なりを聞いた時、突然「雪が降り始めた」と感じました。雪の降る音なんて聞いたこともなかったのに、雪の降る音が落ちてきたと感じられたのが不思議でした。
Mr. C. C.の雰囲気は、打って変わってにぎやかで、楽しく。どんどんと加速していく音楽に、早回しされるチャップリンの映像が目に浮かびました。
Blackbirdは、ピアノの音色の多彩さに驚きました。音自体は小さいのに、張りがあって力強く。自分が何度も弾いてきたピアノという楽器のはずなのに、こんな音が出るんだと不思議に思いました。
休憩前のSpectrumは圧巻の一言。美しく、烈しく。今回のライブの中でも、一番力強かったように感じました。演奏から伝わるエネルギーに当てられて、度肝を抜かれて。休憩に入ってしばらくしても、余韻が抜けませんでした。
休憩後
休憩後のOnce in a Blue Moon。高音で煌びやかに演奏したかと思えば、低音部でどっしりとうごめく演奏。「創造と破壊」という言葉が頭をよぎりました。あと、途中でハープを思わせるような広がりのある音を聞いて、ピアノってこんな音が出るんだとまた驚きました。
次のGreen Tea Farm。まさか今回のライブで聴けると思っていなかったので、この曲がアルバム「Brain」のGreen Tea Farmであると気づいた時に嬉しくなりました。この曲、メロディが穏やかで美しく、好きなんですよね。 中音部のメロディは維持しつつ、高音と低音を交互に演奏していくアレンジを聞いて、Brainの頃より上原ひろみさんの表現の幅がずっとずっと広がったんだなと感嘆していました。このアレンジのGreen Tea Farmは、本家よりも可愛らしくて、星降る夜の小さな農村を連想しました。
Rhapsody in Various Shades of Blueは圧巻でした。この曲を「旅のようだ」と例えた方がいらっしゃいましたが、まさにその通りだなと思って聞いていました。目まぐるしく変わっていく曲の雰囲気、音色。終わらなければ良いのにと思った演奏も、終わりがきてしまって、凄く切なくなりました。
アンコール後のSepia Effectは、上原ひろみさんによる本ツアーのエンドロールを聞いているような気がしました。技術的には複雑なことをやっていても、そんなことは微塵も感じさせない綺麗な演奏。ライブの最後にふさわしい、平穏で満ち足りた一曲でした。
ライブを聴き終わって、放心しました。心が別世界に連れ去られたような体験。他では決して味わうことのできない、素敵な時間を過ごすことができました。一生の思い出に残る夜でした。
- アーティスト:上原ひろみ
- 出版社/メーカー: Universal Music =music=
- 発売日: 2019/09/18
- メディア: CD