https://spaceplace.hatenablog.jp/

本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

MENU

法条遥「リライト」感想ーこの記事は、すでにリライトされている。

作品情報

リライト (ハヤカワ文庫JA)

リライト (ハヤカワ文庫JA)

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 この記事は、すでにリライトされている。

 別に未来人がやってきたと言いたい訳ではない。純粋な意味でのリライトだ。すなわち、文章を書き直すこと。そのような意味において、これはリライト後の文章である。このリライトにより、この記事の下書きとなった私の文章は、何一つ残らず消し去られている。

 この部分を読んで、こう思った方もいるかもしれない。これは本当にリライトされた記事なのかと。それを疑う方には本記事を一度読み終えることをお勧めしたい。この記事の末尾にはこう書かれているはずだ。「この記事は......リライトされた。」と。また、記事の冒頭部分で、すでに記事の終わりについて言及できていることは、記事を執筆し終わった後に改めてこの記事をリライトしたことの証左だろう。

 これでもなお、疑う方もいるかもしれない。末尾にこのような文を書くことを構想した上で、一から執筆している途中なのだと。リライトはまだ行われておらず、リライトされたことを装うために、一通り文章を書き終えたうえで最後に先の一文を挿入するつもりではないかと。残念ながら、下書きを完全に破棄する形でこの記事のリライトが行われてしまっている以上、リライト前の文章があるか否か証明する手立ては私にはない。何から何まで完全にリライトされたこの文章には、リライト前の痕跡は残ってはいないのだから。

 このような文章のリライトは一切痕跡を残さないのに対し、本書の「リライト」は登場人物が過去の記憶という「リライト」前の痕跡を残し続けているのが面白い。そしてそこから生じるパラドックス。それによって本書を一読して全貌を把握するのが難しくなっていると同時に、それこそが本書を深く読み込もうとする動機を与え、本書の読書体験を他とは違ったものとしている。

 と、ここまで読んでみて、本記事を読んだ賢明な読者の方はこう思うかもしれない。本記事の第1段落から第4段落が、リライト前の文章の存在を示唆している以上、本記事にも本書と同じくリライト前の痕跡があるのではないか。加えて、本記事の末尾には、「この記事は、リライトされたことが全く分からない形でリライトされた」と書いてあるが、上記のような痕跡がある以上は、この記事が「リライトされたことが全く分からない形で」リライトされたとは言えないのではないか。

 認めなければならない。明らかに、本記事の中ではパラドックスが起きている。リライトされた文章を示唆する文章と、「リライトされたことが全く分からない形でリライトされた」という末尾の一文との間で。あるいは、この段落そのものと、「リライトされたことが全く分からない形でリライトされた」という末尾の一文との間で。矛盾している文章ほど、訳が分からないものはない。このパラドックスは解消されなければならない。早急に。

 このパラドックスを解消するのは簡単だ。今私が記述しているこの一文を含むリライト前の文章について言及している全ての文章をリライトすれば良い。あるいは、「この記事は、リライトされたことが全く分からない形でリライトされた。」という最後の一文そのものをリライトすれば良い。

 しかしながら、そのようにリライトした瞬間に、この記事の存在価値そのものが揺らいでしまう。これまで本記事で書いてきた内容のほとんどは、本書すなわち「リライト」の感想ではなく、単なるリライトとそれに伴うパラドックスの話である。そして、かろうじて言及されている本書の感想でさえも、本記事におけるリライトと比較されながら記述されている。仮にこの文章から後者の話を抜き出したところで、いったいどんな価値が残るというのか。

 考えなくてはならない。パラドックスを解消しつつ、本記事の存在価値を残すリライトの方法を。パラドックスを解消しつつ、最後の一文とのパラドックスにより生み出された価値を維持し続けるリライトを。しかし、思いつかない。パラドックスを解消しつつパラドックスにより生じた価値を維持するにはどうしたら良いのか。

 延々と悩んでいても仕様が無い。リライトだ。リライトをするのだ。一度書いてみると、文章を書く前の悩みが大したものではなかったことに気づくことがある。文章を書き始めれば、執筆以前に想像していたよりもずっと良い文章が書けることもある。本記事のリライトが、これまではある程度うまくいっているように。

 とりあえず、リライトを開始しよう。今書いているこの段落を延々と書き連ねても仕様が無い。マウスのカーソルを動かして一行目に戻り、本記事のリライトを開始するのだ。そうすれば、きっとこの文章は今までよりもずっと良いものになるだろう。私が悩んでいたパラドックスも、きっとうまい形で解消する方法が見つかるだろう。難題であることは分かっている。それでも挑戦する価値はある。さて、取り掛かるとしよ

 この記事は、リライトされたことが全く分からない形でリライトされた。

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)